平成20年1月25日発行 通巻110号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2008年2月号掲載の松本きりり(まつもと・きりり)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。行政と市民団体の間に立ち、互いの関係を取り持つコーディネーター役を数多く経験している川村透さんからご紹介いただいたのは津市の松本きりりさん。意外な分野へバトンが渡ったその理由は…?

今まで自分は、詩のボクシングという場を
提供してもらってきましたから、
今度は誰かのために、
場を作りたいという気持ちはずっとありました。
松本きりりさんに聞く




「言葉」へのこだわり


……前回の川村さんから、思いがけない分野へバトンが渡りました。お二人はどこで知り合われたのですか?
川村さんとは平成13年に四日市市で開催された、第1回詩のボクシング三重大会で知り合いました。第1回の時は、私が三重代表の一人として全国大会へ行かせてもらい、第2回では川村さんが全国大会へ進みました。彼は凄くいい詩を作りますよ。
……松本さんの活動は詩作がメインですか?
もともと私は15、6年前から川柳を作っていまして。雑誌などの公募や県内の大会などに応募するなどの活動をしていました。詩は、詩のボクシング三重大会に参加してから。三重大会は二年連続で行われて、その後、開催されていませんが、個人的に周りに声を掛けて、平成19年5月に朗読会を行いました。ちょっとしたライブみたいなものです。詩の朗読は、都会なら定期的にライブがあったり、飛び入り参加できる朗読会などが開催されたりしていますが、三重県にはなくって。でも、朗読する人は確実にいますし、誰かに聴いてもらいたい。それもできれば、ちょっとしたステージなどがある場所でやりたいので、自分たちで開きました。お客さんはあまり呼べませんでしたけど、「次回はこんな工夫をしよう」とか、違うアイデアが出てきました。
……川柳から、詩へと活動の幅を広げた理由は?
私が「言葉」というものを大事にしている、こだわりがあるからだと思います。創作を始める時に、一番最初に取り入れたのが川柳だったわけですが、そこからいくらでも広がる可能性はあります。また逆に、川柳でなくてはいけない理由も、自分の中にはあります。詩を朗読しようと思ったのは、やはり面白そうだったからですね。
……川柳の場合、人前で朗読することはないのでしょう?
コンテストなどで、選ばれた句を詠むことはありますが、私が読むことはほとんどありません。
……川柳と詩の朗読、相反する物のようにも感じますが。
私は川柳も、詩の朗読もその場で消えてしまうものだと思っています。正確に言えば、句集や同人誌に残すという形もありますが、私はその場、その場が勝負という気持ちで句を作っていますし、詩の朗読もその場で消えてしまう、潔さのようなものを感じています。
……紙に書き残すことが川柳の基本だと思っていました。
本来は、皆さん、書き残したいのだと思います。でも、私はそれがイヤというか、してはいけないと自分で決めています。残そうと思うと、残すために句を作ることになるように思うからです。
……川柳はどなたか先生に指導を受けたのですか?
自分が気に入った先生に付いて、指導を仰がれる方もいるでしょうけど、私にはそんな時間もありませんでしたし、自分で勉強するしかありませんでした。でも、結局は自分の感性ですから。川柳は、修行に近い部分がありますよ。

詩のボクシング

……詩のボクシングについて教えてください。
今から8年ぐらい前に始まったもので、舞台上にリングを作り、詩人が二人、青と赤コーナーに分かれて3分間、自作の詩を朗読しあいます。朗読後に7人のジャッジが、どちらの詩がより心に響いたかを判断し、勝負をつけます。県単位で大会を開けるところは開いて、代表者を選び、全国大会に進みます。そこで全国一を決めるのです。残念ですけど、三重県では四日市市で2回、大会が行われた後、途絶えています。ですから全国大会にも代表を送っていません。
……その三重県大会に松本さんは参加されていたのですね。
第1回の時は、私も含めて三人の代表者が、全国大会に進みました。その内の一人が初代全国チャンピオンになりました。
……松本さんは?
初戦で負けて、その時は半年くらい落ち込みました。自信もありましたし、自分が負けるとは思ってなかった(笑)。だから「もう二度と、こんなものには出ない」と思いました。どうして負けたのかって、ビデオも何度も見たし、審査員の顔ぶれを考えたりもして、すごいモヤモヤしてましたよ。
……その後、リベンジは?
昨年の奈良大会が近隣県からの参加もOKだったので、友人と連れだって参加したところ、優勝しまして。奈良県代表として全国大会に出てきました(笑)。二回戦まで進みましたから、とりあえず雪辱は果たしました。
……半年も落ち込むというのは凄いですね。
お客さんが見ている舞台の上で、「負け」とジャッジされるのは、やっぱりキツイです。もちろん、その判定は絶対ではなくて、審査員が変われば、判定も変わることもあるはずですけど。それでも、相当ショックですね。大人になってから、負けるってことはあまりないじゃないですか(笑)。自分を否定されたような気がするので、他の参加者も同じように思うみたい。文学と勝負は相容れないし、みんな納得できない(笑)。
……それでも、再び参加しようと思った理由は?
やっぱり面白いからでしょうね。舞台の上で詩を読むのは、たった3分のことですが大変です。丸裸にされるような感じというのかな。それを見ているのがとても面白いですね。あと、ライブ感。上手に説明できませんが、とにかく会場が盛り上がります。「文学」からイメージされるような上品な感じではありません。さすがにヤジを飛ばす人はありませんが、声援などが参加者に送られます。参加者の応援で来ている人ばかりなのに、自分の身内以外の人も応援しだしたりね。その場にいると、みんな大抵、興奮しますよ。惚れ込んだ人だと、毎年、全国大会まで見に行きますね。私の知人だけでも3〜4人はそんな人がいますよ。
……ご自分は丸裸にされる感覚は無いのですか?
私は以前、演劇をやっていましたので、演じる意識で舞台に立っています。心を裸にされた人を見るのは面白いけど、私が裸になることはできませんね(笑)。ただ、私のように舞台慣れしている人は、見ていて面白味がないようですよ。
……衣装なども凝るのですか?
私の場合は、古着の着物を4〜5枚、Tシャツとジーンズの上から羽織っています。イメージとしては、ちょっとアブない感じ(笑)。舞台芸術と言うと大げさですが、お客さんは耳で聞いて、目で見て、その場の雰囲気を掴んで…と全体を見ています。詩の内容だけでは、勝負が決まりません。
……詩は事前に用意するのですか?
基本的には、事前に用意した詩を読みます。ただし、決勝戦だけは即興詩です。題をもらって、そこから3分間で詩を作って、終わらせないといけません。声を出しながら、詩を考える感じ。黙ったり、詰まったりするとステージの緊張が変な感じになるので、意味にならなくても言葉を出し続けます。
平成19年奈良大会の様子。松本さんは見事、一位となり、全国大会に進みました。

第3回詩のボクシング三重大会始動!?

「里山であそぼう」で行った、里山川柳。青空の下で作った作品を読み上げました。
……三重県大会が最近、開かれていないのが残念です。
実は平成20年に、鈴鹿市で開催しようという動きがあります。まだ日程も、会場も決まっていませんが、私が中心となって、県内で文学活動をしている方たちに呼びかけています。参加者募集中ですから、興味のある方はぜひご参加ください。
……なぜ鈴鹿市で開催するのですか?
鈴鹿市は文学サークルも多いですし、市民講座の内容も文学系が多い。それに鈴鹿市文芸賞があり、分野も小説から川柳、短歌、俳句と幅広く募集するなど、文学が盛んな市だからですね。今回、大会を開くことで、「詩のボクシングといえば、鈴鹿」という風に根ざしていきたいと思っています。
……参加者は文学を愛好される方々ですか?
これまでに詩を作ったり、川柳、短歌、俳句などをたしなんでいる方にも声を掛けますが、そういった方々は勝負を付けるという形式に抵抗があるかもしれませんね。今まで詩やポエムに興味のなかった方や音楽系、演劇系の方など、幅広い分野の方に参加してもらいたいと思っています。詩のボクシングは、今まで文学創作に興味の無かった人が参加したり、観客になったりすることで、「言葉って面白いな。力があるな」と感じてもらうためのイベントですから。
……松本さんも参加されますか?
私は今回、スタッフとして参加します。詩の朗読者とイベントスタッフを両立するのは無理だと思います。
……自分が参加するのではなく、運営側に回ろうと思ったのは?
今まで自分は、詩のボクシングという場を提供してもらってきましたから、今度は誰かのために、場を作りたいという気持ちはずっとありました。私は詩のボクシングで新しい、面白い体験ができたし、発見もありました。今度はそれを、たくさんの人に知ってもらいたい。多分、人生や生活が豊かになると思います。
……これまでにイベントを運営されたことは?
昨年5月の朗読会を企画したくらいです。あと、知人から誘われて、平成11年11月に津市の里山で開催された「里山で遊ぼう」というイベントに川柳の先生として参加しました。里山をみんなで歩いて、風景や感じたことを川柳にして、青空の下で発表しました。
……創作とイベントの運営は、正反対の力が必要に思いますが。
川柳などの創作活動は、つまるところ個人の作業です。どんどん内に入っていく活動。イベントは逆に、外へ向かっていかなくてはいけませんからね。様々な人と繋がって、活動を作っていくという市民活動的な動きは、私がこれまで知らなかった、できていなかった部分ですから、学んでいかなくてはいけませんね
※注
詩のボクシングとは。
ボクシングリングに見立てたステージ上で、2人の朗読ボクサーが交互に自作を朗読し、どちらの声と言葉がより観客=他者に届いたかをジャッジが判定する「声の言葉のスポーツ」、「声と言葉の格闘技」。
音声詩人の楠かつのりが、1997年10月に日本朗読ボクシング協会を発足し、「詩のボクシング」と銘打ち、2人の朗読ボクサーが交互に10ラウンド朗読して闘 うタイトルマッチが行われたのが、その始まりです。

松本きりりさんはこの人を紹介します。
内藤かつさん
自分たちが楽しむのはもちろん、ボランティア精神を持ってコーラス活動に取り組んでいます。
おねがい
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