平成19年12月25日発行 通巻109号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2008年1月号掲載の川村 透(かわむら・とおる)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。世古口文子さんからバトンが渡ったのは鳥羽市の川村さん。10年ほど前から市民参加のまちづくりに取り組み、行政と市民団体の間に立ち、互いの関係を取り持つコーディネーター役を数多く担当しています。
「町を良くするためには、絶対に実現させたい」
という熱意です。
NPO法人伊勢志摩NPOネットワークの会 事務局次長
川村 透(とおる)さんに聞く
市民活動の中間支援の先駆け
……市民活動を始めたきっかけは?
僕の場合は、鳥羽青年会議所(以下、JCと略)の活動です。JCで市民参加のまちづくりに取り組み、鳥羽小学校の建て替えに係わったことが原点になっています。それが今から10年ほど前です。
……早くから、市民参加のまちづくりに取り組んでいたのですね。
JCでの兄貴的な存在として、元鳥羽水族館副館長の中村元さんがいて、彼が早くから市民参加のまちづくりの必要性を語っていました。40歳でJCは卒業しましたが、その後、中村さんが「でもくらしちずん」というまちづくりを考える市民塾を開いた時に僕にも声がかかりました。また、同時期に南勢県民局の方から「伊勢志摩地域のNPOを活性化するために必要なものを考えるアンケート事業」の相談を中村さんが受けて、アンケートでは面白くないので、この地域で活発に活動している人を集めて、伊勢志摩地域でNPOがイキイキと活動出来るためのビジョンづくりをワークショップで行うことになりました。その結果、中間支援のようなゆるやかなネットワークを作ろうということになりました。それが今僕が、事務局次長をしているNPO法人伊勢志摩NPOネットワークの会です。交流会や研修ができて、ワークショップの技術でサポートできるような仕組みを作りました。
……後押しのような活動ですね。
自分が何かをするというよりも「どうにかしたいんだけど…」という人を支援しています。これまでの巡り合わせで、行政支援をすることも往々にしてありますね。例えば、協働で事業をしようと行政から市民に投げかける時に、よくミスマッチが起こります。両方とも悪気は無いのに、文化が違うために揉めてしまうことを何度も体験したものですから、間に立ってコーディネートする立場として中に入っていきました。そのきっかけが鳥羽小学校です。
完全公募型フルオープンで、学校候補地を選定
……鳥羽小学校の候補地提案事業をワークショップで行うことになった経緯を教えてください。
元々は校舎の建て替えについてPTAやJC、地域の人を交えてワークショップを行っていました。ところが、現地での建て替えができなくなり、移転場所が無いという状況に陥ってしましました。そこで僕らは土地の選定から公募型で行おうと投げかけました。前代未聞だと言われましたが、行政とPTA、地域の代表格の人たちが参加して、完全フルオープンで、学校用地選定を行うことになりました。
……行政の関わり方は?
鳥羽市教育委員会が行政側の窓口になり、書類作成などの資料作成、議会や、県など担当部署との連絡などを担当していただきました。伊勢志摩NPOネットワークの会は会議の企画進行をコーディネーターとして委託されました。三重大学の浅野先生にはアドバイザーをお願いしました。
……行政側におおよその計画などはなかったのですか?
様々な意見はありましたが、会議をオープンにしたので、建て替え時に重ねたワークショップの流れを尊重することになりました。ただし、1回目のトライは不調。2回目のトライで土地が決まりました。
……1回目が不調に終わったのは?
最初は幾つか挙がった候補地を、できるだけ客観的な評価をすることから始めました。市内のことですから、感情や情念など、数字では割り切れないことがあるので、それに左右されないよう学校の用地として相応しいかどうか、評価の基準をつくりました。一番大事なのは通学路の安全など、子どもたちの安心安全を確保することです。その他に、土地の価格や、以前どのような使われ方をしていたかなどを精査しました。その結果、一番合理的な場所となった候補地が小浜地区でした。ところがここは鳥羽の観光の要で、文教地区ではありません。僕たちというか、行政自体もそのことを重く考えていませんでしたが、観光業者の方から「大人が遊ぶような所に、子どもがたくさんいるのはどうか」という意見が出てきました。
……最後に覆されてしまったのですね。
学校についての会議ですから、PTA、自治会を中心に、JCやロータリークラブ、商工会議所などから参加してもらっていたのですが、正直、産業界の方はあまり関係が無いだろうと思っていました。でも、オブザーバーとして会議に参加していただいて「観光についても考えに入れて欲しい」と言われて、やっと気付きました。それに、ワークショップの認知度がまだまだ低くて、「勝手に話をしているだけ」と他からは見られていたようです。
……オープンな会だからこそ、意見が聞けたのですね。
意見がわかって良かったです。観光は鳥羽市にとって大きな要素ですから、最終的に市長が「保留」の決断をしました。その後に市長選挙があり、いろいろと面倒なことになりました(苦笑)。
……面倒なこととは?
鳥羽小学校問題が市長選の争点になりました。コーディネーターの僕は、できる限り中立ということで、各候補者に対して「市民会議から出た意見を尊重して欲しい」と、文章でアピールしました。
……個人の活動が制限されてしまったのですね。
僕は建築士で、工事も請け負っているのですが、中立性を保つために鳥羽市へ入札願いを出すのを止めました。金儲けのためにしていると思われるのはイヤだったからです。それに、土地を応募している人たちとも、できるだけ個人的に会わないようにしました。同じ町で生活していますから、どうしても会ってしまうので、おかげで外にお酒を飲みに行くこともできませんでしたよ(笑)。
……2回目のトライは?
再度公募から始めました。市長と教育長は初回からずっと参加してくださいました。まず最初のオリエンテーションで取り組んだことは、「何のために、市民参加型ワークショップの会議をするのか」を全員に説明すること。3時間くらいかけて話をして、意見交換をしました。一つひとつ意見を募って、お互いの合意を取って。合意が取れたら、それを文字に書いて、確認しながら進んでいきました。毎回の会議でも、前回で決まったことを書き出して、振り帰りを行いました。
……参加者の民度、意識も上がったでしょう?
なかなか上手くはいきませんが、行きつ戻りつしながら…ね。とにかく舞台裏で動くのは止めて、言いたいことがあるなら会議の場でガンガン言う。裏で動こうとする人には「子どもたちのためになりますか?」と投げかけました。会議のメンバーはもちろん、市長や教育長にも「会議のやり方を信用してもらって、勝手に自分たちがどこかで決めることはない」と言ってもらうようお願いしました。そうしてもらうことが、会議も、市長や教育長自身をも守ることになります。
……市長の言葉が重く受け止められることもあるのでは?
完全にフラットな場所では、権限を持っている人の方が、逆に弱者になってしまいます。市長には市の事情も、議会との関係もありますから、それらを考えると行政側は市民から言われたい放題になってしまいます。そんな雰囲気にならないように、行政も市民も一緒に考えるんだというスタンスを全員に持っていただくのが大変でしたね。万が一、行政に対して一方的に市民が意見を言うようなことがあっても、間に立ったコーディネーターが止めました。
……トラブルの対処方法がきちんとしていますね。
できるだけ精密な企画を組んだ上で、さらに本番は何が起こるかわからないから、最悪の事態も想定して、何段階かに分けてセキュリティーを作りました。周りからは「そこまでする必要がある?」と言われましたけど、僕は心配性なんで(笑)
……その結果は?
最終的に堅神町に土地が決まりました。学区の北の端に立地するなどやや課題があったのですが、それはスクールバス機能でフォローすることで、最終的に合意を取りました。現在は建物の設計が終わり、建築業者も決定。数年後の開校を目指しています。
……このワークショップが無ければ、どうなっていたでしょう?
多分、まだ土地も決まってなかったでしょうね。決まらずに宙に浮いてしまう、子どもたちにとって最悪の状態だけは免れました。ただ、この結果は全員が平等に苦い薬を飲んだということですね。子どもたちのために、大人としての責任を取ったので、多分、全員が平等に不満足だと思います。
……教育委員会との関係は?
信頼がありました。どんな団体も最終的には個人と個人。会議の内容をどこまでも一緒にすりあわせていこうと、教育委員会の担当者たちと話し合いました。
……途中で役を降りたくなったことは?
僕が辞めたら、次は誰もやらないだろうと思ったので(笑)。辞めても「大変だから、仕方がないよね」と言われるだけだとわかっていたのですが、だからこそ自分が逃げないように、僕個人で受けるのではなく、伊勢志摩NPOネットワークの会の受託事業にしました。鳥羽小学校の問題に関わらなかったら、この先、市と協働で事業をすることはないとも思っていましたから、多少無理をしてでもやらなくてはいけないと考えていましたね。
鳥羽小学校のワークショップ、1回目のトライの様子。土地を選定しています。
市民参加型ワークショップの形式が根付く
……その後、鳥羽市でワークショップ形式が取り入れられることは?
市の総合計画を市民委員と行政委員で企画委員会を立ち上げて決めていたのですが、その後期見直しをワークショップ形式で行いました。僕は途中から委員として参加したのですが、市民委員たちが参加を苦痛に感じていたのがわかりました。それで、今から改善できるところは変えようと思い、担当者に僕の方からワークショップ形式を取り入れることを提案しました。担当者が前向きな方だったので、実現することができました。
……市職員とも仲がいいのですか?
職員のファシリテーター研修の講師や、とばみなとまちづくり市民協議会のコーディネーターなど、いろいろやってますからね。
……市職員からも評価されているでしょう。
立場によって評価してくれていたり、面倒に思っていたりするでしょうね。ワークショップ形式を取り入れると、どうしても行政改革を強いるところがありますから。それに、市民参加型と声をかけると、「とりあえず市民の声を聞いたと言うつもりだろう」と思って集まってきますが、本当にその場で決めるから、行政担当者は大変なんですよ。特に鳥羽小学校のようなハード整備は扱う金額も、厳しさも桁違い。利害も入り交じるなかで、協働型ワークショップで決めた事の効力は法的に保障されていませんから、非常につらいですね。
……鳥羽市以外からも声がかかるのでは?
伊勢のまちづくり市民会議も、研修講師としてサポートしました。いつの間にか、協働事業を行う時の指南役になってしまいました。
……行政と協働事業を行ううえで、大切なことは何でしょうか?
スピリットというか、ソウルでしょう。つまり、「町を良くするためには、絶対に実現させたい」という熱意です。行政と市民が、その熱意だけは共有できるという前提が最低限ないと、何もできません。
……全員が同じ熱意を持つのは難しいのでは?
それは僕も無理だと思います。でも、熱意のある人が核にいて、技術を身に付けた人たちが周囲を固めてチームを組めばできますよ。多少温度差があっても、技術があれば役割分担できますからね。その辺りの割り切った役割分担が行政職員さんは得意ですね。でも、核になる人には熱意をきちんと持っていて欲しいですね。
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NPO法人伊勢志摩NPOネットワークの会
516-0011 伊勢市一色町2 森本オフィス内
Tel.0596-20-6616 Fax.0596-20-6617
E-mail morikao@lilac.ocn.ne.jp
ホームページ http://ponpp.net/index
川村 透さんはこの人を紹介します。
松本きりりさん
平成20年に三重で開催する予定の詩のボクシング全国大会や川柳などで活躍されています。
おねがい
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毎月10日
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