平成19年10月25日発行 通巻107号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2007年11月号掲載の松野 博(まつの・ひろし)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。音訳ボランティア歴約30年という井上苑枝さんからバトンが渡ったのは、防災と災害救援の活動を行っている松野 博さん。「防災一座」というユニークな名前で、カンパン料理教室や体験型防災教室などを行っています。

コンセプトは
「防災は美味しい、楽しい、面白い」です。
防災一座 代表
松野 博さんに聞く



防災一座、四日市市で旗揚げ


……松野さんの防災活動について教えてください。
はい。私が代表をしている防災一座は四日市市や菰野町などの三泗地区、三重県北勢地域をホームタウンに、防災と災害救援をテーマに、みんなが寄り添えるまちづくりに挑戦しています。2003年の1月に一緒に活動できそうな知人に呼びかけて仮称で活動を始め、翌2004年5月に総会を行って、正式に発足しました。現在、メンバーは15名、会員募集中です。
……防災活動をまちづくりに応用しているのですか?
活動のテーマは「命の輪、地域のふれあいの輪を広げるまちづくり」です。防災や災害救援について最初から詳しい人なんて、一人もいません。だからこそ、みんなでよりあって、それぞれの職業や人生経験、知恵、知識、資格、技術を持ち寄って、協力しながら学びあい、実践することで、この地域を少しでも災害に強いまちにしていきたいと考えています。そのための具体的な活動として取り組んでいるのが地域防災活動。イベントや防災教室などを行っています。最近では小学校や社会福祉協議会などからの依頼で子どもたちを対象にした防災教室を行う機会もいただいています。
……新聞などに取り上げられることで依頼が来るのですか?
クチコミや知人からの依頼が多いです。四日市市の総合防災訓練や菰野町で行われるイベント「けやきフェスタ」に参加していますから、その辺りで少しずつ活動を知ってもらっていると思います。
……活動日は?
イベントなど、人手がいる活動は月に1〜2本に絞るようにしています。メンバーの負担にならず、かつ活動が散漫にならない工夫です。もちろん、そう言っていられない時もありますが。小学校の防災教室などは平日になるので、先方に幾つか候補日を挙げてもらい、メンバーで調整しています。
……仕事をしながら、平日の活動を行うのは大変でしょう?
ボランティア休暇を率先して取るように言ってくれる会社ならいいのですが、なかなか休暇が取り難い会社もありますからね。私は自営業なので、少しは融通が利きます。
……活動が忙しすぎると、メンバーの熱意を持続させるのが難しくはありませんか?
家庭や仕事の事情があって、なかなか集まりにくいので、そこは苦労しているところですね。でも、無理矢理来てもらうと、最初に抱いていた気持ちからずれてしまうので、参加できる人だけで、活動の幅を絞りながら維持しています。
……熱意をつなぎ止める方法は?
それは僕も知りたい(笑)。メンバーとお話したり、会議の時にできるだけ美味しい物を持ってきたりすることかな(笑)。でも、イベントなどで子どもたちが笑って、寄ってきてくれるとメンバーたちも「嬉しい」って言いますね。
……資金面は?
調査研究費や防災教室の必要品などは助成金や寄附金をお願いしたり、若干、参加費をいただいたりしています。それでも赤字になる場合は会員からいただ
いている会費・通信費で、また、講演費などをいただける場合はできるだけお受けして、運営費などに充てています。

タマゴの小道で、体験型防災教室

……防災一座が行う防災教室について教えてください。
私たちの小学校の時の防災訓練って「地震だ、机の下にもぐれ!」と言われた後、しゃべらずに廊下に並んで、数分以内に校庭に逃げるというプログラムだったでしょう。でも、その訓練は現実に即していないということが阪神・淡路大震災以降、わかったわけです。大地震が来たら、学校の廊下なんてガラスの海。中越地震などの時は校舎そのものが壊れました。そんな状況で、何も知らない子どもたちがスムーズに校庭まで出られるわけがありません。防災教室にしても備え付けの防災頭巾をかぶって、地震体験車に乗って、話を聞いて終わりというのが普通だったと思います。私たちの防災教室は今までの物にプラスアルファ。ゲームや体験型の選択肢を増やしています。だからもれなく休憩があります(笑)。身体を使うからね。
……ゲームや体験型の選択肢とは?
防災訓練の時に「火事だ!119番!」と声を出す練習をしますが、例えば、それを大声コンテストにするだけでもゲーム感覚になります。あと、私たちがよく取り入れているのはタマゴの小道です。
……タマゴの小道?
学校などの廊下にブルーシートを敷いて、その上にタマゴのカラをばらまきます。それを踏まないように、ハダシで歩いてもらいます。先程も言いましたけど、大震災時には学校の廊下はガラスの海になります。タマゴのカラをそのガラスに見立てているのです。
……リアリティがあって、わかりやすいですね。
本来なら、このカラはガラスなんだよと話ながら、実際の写真などを見せます。子どもたちも一生懸命、どうやって歩くか考えますよ。最終的には教室にあるものなどで取り除く方法や、厚手の雑誌などを使ってそこを歩く方法などを伝えています。それで最後はだいたい、カラのぶつけあい。いつもぶつけられています(笑)。
タマゴの小道

……タマゴのカラを集めるのも大変ですね。
地元のケーキ屋さんなどに協力してもらっています。これも身近な社会貢献です。一度使ったカラは肥料にしています。最近は再利用できるように発泡スチロールのカケラを使っています。
……話を聞くだけでなく、参加できるのがいいですね。
遊びながら、五感で覚えてもらうことが大切かなと思います。そのためのシミュレーション型の体験教室です。休憩の時に、あらかじめ作っておいたカンパンを材料にしたお菓子を食べてもらい、それを入り口に防災袋の内容について考えるなど、子どもたちとの時は特に、興味を持ってもらえるような流れを大切に考えています。
……カンパンのお菓子とは?
油で揚げて、砂糖やカレー粉をまぶした揚げカンパンやチョコレート菓子のほか、カンパンを材料にしたハンバーグやおひたしなどのレシピもありますよ。
……カンパン料理ですか。誰が考えたのですか?
言い出したのは私(笑)。うちのメンバーが全員、食いしん坊だったからですね(笑)。自治体や企業の防災備蓄はもちろん、個人の防災袋にもカンパンって入っているでしょう?入れ替えの時まで災害に遭わずにすめば残りますよね。もったいない。そこでどうやって食べているか聞いてみたら、「美味しくないなあ」と思いながら、修行のように食べている人が多かった。今のカンパンはそのままでも十分に美味しいのですが、水分が少ないのでちょっと食べにくいと思う人が多いようです。本来、カンパンは一緒に入っている氷砂糖を食べて、唾液を出して食べるのが正式な作法(笑)。それでも、小さな子や高齢の方には食べにくいでしょう。そこでもっと美味しく食べられるように工夫しようと思いました。最初はクラッカーのようにジャムやチーズをのせたり、スープのクルトン代わりに入れたりしました。それがどんどんマニアックな世界になって、ついにはハンバーグやチョコレートができあがりました(笑)。レシピも公開しています。
……レシピを考えたのは?
メンバーみんなで。それに、食育分野で活動しているNPOなどに知人がいたので声を掛けて、共同開発させていただきました。学校などで防災教室を行う時に、子どもたちに作ってもらうこともあります。カレーに入れたり、パフェやクレープを作ったり。アイデアいっぱいですよ。あと、イベントなどでも試食会を行っています。
……イベントの時に食べ物があると、人集めにいいですね。
寄ってきてくれますね(笑)。特に子どもたちは「まず〜い、もう一個ちょうだい!(笑)」って来てくれるので、それをきっかけにコミュニケーションを取りながら、地震の写真を見てもらったり、頭を守るダンゴムシのポーズを教えたりします。
……楽しめる防災教室ですね。
コンセプトは「防災は美味しい、楽しい、面白い」です。こうしたやり方なら子どもや女性も主役になれるでしょう?今までの防災訓練はどちらかと言えば男性主役のイメージ。消火器や消防ホースで放水したり、瓦礫をどけて救助をしたり。もちろんそうした訓練が基本ですが、炊出し訓練というよりは料理教室というイメージの訓練があってもいいでしょう。女性や子どもが笑顔になれる訓練を考えた時に、防災クッキングは楽しいツールになったと思います。
……従来型の防災訓練を変えようと考えたのですか?
いいえ、そんな大そうなことではなくて、考え方をちょっと変えてみただけです。バーベキューパーティーも裏返せば炊出し訓練です。災害時というのは、無人島に突然放り出されるわけではなくて、今いるここで起こることです。ゼロから火を熾すことから始めなくても、今あるものを上手く使えばいいし、そちらの知恵の方が面白いと思って取り組んでいます。
……発想の転換ですね。
日常生活で起こることはすべて災害時にも起こります。実は最近、アレルギーを持つ子どもたちをサポートしている団体と知り合って、いろいろ情報交換をしています。アレルギーの種類によってはカンパンが食べられない場合もありますから、災害時に食べられる食料の備蓄について、私たちにも声を掛けてくれたのです。
……アレルギーは命に関わる問題なのに、防災という分野ではなかなか考えられませんね。
アレルギーだけでなく、糖尿病など、常に薬が必要な持病や難病を抱えた人たちがいます。ひょっとしたら、私たちだってそうなるかもしれません。災害時用の薬や食料の確保を考えておく必要があるのに、防災や災害救援の枠組みの中だけで考えていると、多種多様な方向になかなか視点が広がっていかないのです。だから、今回のように当事者の皆さんから問いかけてもらうのは大切だし、嬉しいことです。私たちも病気の知識を得られるし、その団体も防災倉庫の備蓄品にアレルギー対応の物を入れてもらう活動ができますよね。Win-Winの関係です。こちらもサービス精神旺盛なので、いろいろアイデアを出しています(笑)。
……他の団体とも上手く繋がっていますね。
周りの皆さんやスタッフのおかげです。本当にありがたいです。それぞれの団体が知恵を出し合いながら新しい物を作る。できた物は共有して使えばいい。そういう考え方です。
……柔軟ですね。
防災一座の活動が「今までのやり方では対応が難しいのでは?」という疑問からスタートしていますから、現実に基づいたことから考え始めようというスタンスです。アレルギーも、カンパンもそう。今までの訓練と少し軸をずらすだけで気付くことがたくさんあると思います。私たちがやっているのは防災を考える入り口づくり。子どもたちが防災教室で喜んでくれれば、その話を家に帰ってしてくれるでしょう。それがきっかけになって、家族で防災について話してくれればいいなって思います。

防災一座 Tel.&Fax.059-331-2256(松野)
レシピ 乾パンチョコクリスプ
【材料 1 口サイズ20 個分】
乾パン15 個(1/2 缶弱)
市販の板チョコ1 枚
ピーナッツなどナッツ類(大さじ2 杯、お好みでどうぞ)
【作り方】
(1)乾パンとナッツをにんにくつぶし器などで砕き、厚手の保存用袋などに入れて再度小さめに砕く。
(2) 板チョコを割り、陶器のボールに入れて電子レンジや湯煎で溶かす。
(3)(2)の中に(1)を入れ手早く混ぜ、(再度温めて)型やホイルカップなどに入れて冷ます。
* お好みに応じて(3)にリキュールやブランデーを少量入れると大人向けに。
* 湯煎でチョコを溶かす場合、チョコに水が入らないように気をつけてください。

松野 博さんはこの人を紹介します。

世古口文子さん
NPO法人めいわ市民活動サポートセンターの理事長として活躍されています。

おねがい
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Fax.059-222-5971 E-mail seiknpo@pref.mie.jp

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