平成19年5月25日発行 通巻102号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2007年6月号掲載の吉村陽子(よしむら・ようこ)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。視覚ハンディを持ちながら、ハーモニカの演奏をボランティアで行っている伊藤静生さんからバトンが渡ったのは吉村陽子さん。印刷物を朗読し、音訳データにするボランティアを始めて、今年で8年目を迎えます。
どこまで感情を入れて読むのかということは、
音訳の世界では永遠の課題でしょう。
三重県声のポスト友の会
吉村陽子さんに聞く
本や冊子を音にして、視覚障害者に届ける朗読ボランティア
……朗読ボランティアの活動を教えてください。
私は三重県視覚障害者支援センター(旧名称・三重県点字図書館。以下、支援センターと略)を拠点に活動している三重県声のポスト友の会に属しています。主な活動は「声のポスト号」の発行。これは視覚障害者の方のために、月に1回、週刊誌や雑誌、新聞などから記事を選んで、90分のテープに5〜6人が分担して吹き込んでいます。あと、夏には利用者のお便り、冬にはスタッフが年賀状代わりに近況などを吹き込んだ特集号を発行していますので、年14本のテープを作っています。利用者の方は130人ぐらい。県内が主ですが、県外に移転された方でも希望されればお送りしています。視覚障害者の方は健常者が得る情報の2割ほどしか、情報を手に入らないということですので、少しでも情報をお届けしたいと思っていますが、主婦感覚で記事を選んでいますから、いろいろとご不満もあるかもしれません(笑)。この他、県議会だよりや観光みえ、県が発行する様々な冊子なども音訳しています。
……ボランティアを始めたきっかけは?
私は子育てが好きで、子ども中心の生活をしていましたが、長男が高校一年生になった頃に、そろそろ子離れしなくては…と思いまして、子育てに代わる(笑)、打ち込めるものを探すようになりました。その時に見つけたのは絵本の読み聞かせ講座です。息子たちにも絵本の読み聞かせはしていましたし、読むのは好きでしたけど、子どもたちに見つめられながら絵本を読むのがとても恥ずかしくて(笑)。あと、小学生の時に担任の先生が給食の時間に、「トムソーヤーの冒険」や「小公子」など、子ども用の名作を少しずつ読み聞かせてくださったことが、とても印象に残っていましたので、絵本よりも長い物を読みたいと思っていました。その時に、三重県点字図書館(当時)の朗読ボランティア講習の案内を見て、応募しました。
……当初の目的は「誰かのために…」ということではなかった?
どちらかと言えば、自分が読みたいという気持ちからでした。申し訳ないことですけど(笑)。でも、今一緒に活動している方たちが「動機は何でもいいのよ。続けてくれれば」とおっしゃってくださるので、ちょっとホッとしています。
……朗読ボランティアになるには?
年に1回、秋頃に三重県視覚障害者支援センターが初級講習を行いますので、それを受けていただきます。その後、県内に朗読グループが11団体ほどありますので、そこに属していただけば活動ができます。募集の記事は各市町の広報にも掲載されますし、最近は新聞などにも載るようです。あとは習熟度に応じて、支援センターの審査を受けて合格すると、支援センターの蔵書となる様々な本を音訳することができるようになります。審査は年2回あり、前回は15〜6人くらいが応募され、その内の7〜8人が合格したそうです。審査に合格する期間は個人差があって、私の場合は幸い、割に早く合格することができました。審査は必ず受けなくてはいけないものではありませんから、その方の考え方によっては蔵書にこだわらず、広報や情報誌だけを音訳してみえる方もいます。
文章を音にするのが好き
……朗読の作業はどこで行うのですか?
「声のポスト号」は共同作業ですので、津市にある支援センターで録音しています。メンバー持ち回りなので隔月で3日ぐらいです。蔵書の音訳は自宅で行っています。もちろん、自宅で録音するのが無理という方は所属グループの録音室などを使われていますよ。
……自宅に録音用の機械があるのですか。
全部自分で揃えました。今はパソコンを使って録音しています。
……自宅の場合、周囲の雑音が入ったりすることはありませんか?
この辺りは静かですし、パソコンで録音すると生活音をカットしてくれるので大丈夫。オーディオインターフェースという道具はつけますが、ノートパソコンをお台所に持ち込んで録音することもあります。カセットテープに録音していた頃は小さな音まで拾ってしまうので、真冬でもエアコンやストーブが使えませんでした。いっぱい着込んだ上に、電気毛布をまとって、更に録音機の周りも暗室のように囲って、その中に潜り込んで録音していました(笑)。それを思うとすごくラクになりましたね。私は主婦ですから、生活するだけならパソコンは必要ありませんでした。でも、障害を持った方たちのために便利な方法や機械が開発されていくのはいいなと思っています。
……パソコンはどうやって覚えたのですか。
デジタル編集作業を勉強するうちに、使えるようになりました。使いこなせるようになるまで2年ぐらいかかりましたが、そのおかげでインターネットの使い方など、別のスキルも覚えました。
……デジタル編集の利点は?
訂正が簡単になりました。テープ録音の時は、間違った部分が1分なら、その1分という時間に収まるように録音し直さなくてはいけませんでした。1行抜けていたら、やり直しです。でもパソコンなら、後から途中部分に吹き込んでも、自動的にはめ込んでくれます。
……保存もデータで行っていますか?
今、データで保存して、やり取りすることを試行していますが、納める時にはCDかテープに録音しています。テープは音の劣化が激しいですし、現存のテープも今、CDに移し替える作業をしていますが、利用者の方はテープを利用している方がまだまだ多いですから、私はCDとテープ、両方作っています。
……支援センターの蔵書データは県内のみで利用するのですか?
ビブリオネットという全国ネットがあり、日本中の方に聞いていただけるようになっています。ですから別のセンターで着手した本は音訳せず、まだ手をつけていない本を音訳するようになっています。
ご自宅での朗読の様子。マイクにタオルが巻いてあるのは、体などが当たって音をたてるのを防ぐためです。
……読む本は自分で選べるのですか?
私たちの場合は、支援センターが選書したものを順番に担当することになっていますので、自分の意志では選べません。基本的には1タイトルは一人が担当。シリーズ物の場合も、同じ人が読むようになっています。
……時間はどれくらいかかりますか?
支援センターの希望は4ヶ月間ぐらいです。ただ、自分が読み上げるだけではダメで、その後、校正に1ヶ月は確実にかかります。録音データを全て聞いていただく校正が2回と、訂正ヶ所のチェックをする部分校正が1回。合計、3回は校正します。
……間違っていることもあるのですか?
いっぱい(笑)。てにをはとか、漢字の読み方ですね。漢字は表意文字ですから、普段は正確な読み方を意識しなくても、見れば意味が通じてしまいます。でも、それを実際に音にするとなると…。あと一般名詞はいいのですが、名前や地名などの固有名詞はいろいろな読み方がありますから、事前に正確な読み方を調べないといけません。例えば「北川」。伊豆の方ではこれを「ほっかわ」と読むのだそうです。固有名詞には思いがけない読み方があるので、特に注意しています。
……自宅なら一日、何度も時間を分けて録音できますね。
それができる方もいると思いますが、私は少し喉が弱くて、ちょっとしたことで声の調子が代わってしまいますので、用事の無い、一日録音にかかれる日にまとめてしています。時間は午前に2時間、午後に2時間。それ以上になりますとやはり喉が疲れてきます。
……朗読は標準語でするものなのですか?
全国で聞かれることになりますから、標準語です。でも、地元の広報などは土地のアクセントが入った方が、親近感があります。
……ニュースと文学では読み方も変わってきますか?
朗読ボランティアが始まった当初は「淡々と読む」ことが第一で、棒読みのような感じだったそうですが、印刷物などを読みとって音に替える機械の性能も良くなっていますので「棒読みなら、機械に読ませた方がいい」というご意見もあって、以前よりは情景が伝わるような読み方に変わってきています。例えば「あ」という言葉でも、思い出した時の「あ」、驚いた時の「あ」では全然、音が違いますよね。間違った音を出すと、利用者が混乱しますから、音を聞いただけで状況がある程度想像がつくように選択します。でも、どこまで感情を入れて読むのかということは、音訳の世界では永遠の課題でしょう。
……利用者との交流もあるのですか?
三重県声のポスト友の会は利用者との交流会も行っていますので、いろいろとお話を聞くことができ、利用者に育てていただいていると感じますね。利用者と交流することで「見えない」ということがどういうことなのかを、体感することができます。お芝居などの朗読の場合、本の中に絵や写真、地図、表などがあったとしても読みませんよね。でも、私たちはそれも言葉で説明しなくてはいけません。そんな時に利用者のことをわかっていると、どう処理するのが一番良いかがわかります。朗読ボランティアを育てるのは利用者の方。少々、拙くても「ありがとう」とおっしゃっていただけますが、それじゃ朗読ボランティアが育ちません。「聞きやすいテープが欲しいのなら、どんどん文句を言ってください」って、利用者の方に言ってます(笑)。
……利用者と個人的なつきあいもあるのでしょう?
一人で北海道旅行をされた視覚障害者の方をセントレアまで送迎したこともありますし、今年の1月には新潟県の視覚障害者グループが設営したスキーツアーに参加しました。
……視覚障害の方はどうやってスキーをするのですか?
最初はハンディのあるなし関係なくみんな同じで、滑る、曲がる、止まるという動作をマンツーマンで覚えてもらいます。それがある程度できるようになったらゲレンデを滑るのですが、その時はスピーカーを背負ったガイドが先導します。スピーカーからは常に音が流れているので、それを聞きながら、後をついていきます。曲がる時などはガイドが「ターン」と声をかけます。
……前回登場の伊藤さんもそうですが、ハンディを持った方が、活動的になっていますね。
ハンディを持った方を見かけると「何かお手伝いしたいな」と思いつつも、遠慮してしまうことがありますから、ハンディを持った方から「手伝って」と声を掛けるなど、周りを巻き込んでくださるといいですね。
……朗読ボランティアを増やすためにはどうすればいいでしょう?
本が好きな方が朗読に憧れるのか、初級講座を受けられる方は多いのですが、活動そのものは地味ですし、時間もかかりますので長く続ける方は少ないですね。でも、自分では選ばないような本に出会うこともありますし、地名などの読み方など、これまで知らずにいたことを知ることができるのは楽しいと思います。朗読の技術も読んでいるうちについてきます。私たちの先生は「朗読は読み解きの作業」とおっしゃいますが、長く続けていると何度も下読みしなくても、意味が取れるようになってきますし、経験の力は大きいですね。
……熱意を持続するには?
朗読が好きだということ。私は文章を音にすることがとても好きで、いつまでもこの活動を続けたいので、自分はもちろん、家族みんなにも元気でいてもらわないといけないと思ってます(笑)。
……ご家族の理解は?
お陰様で、全面的に協力してくれますので、ありがたいと思っています。朗読中は子どもたちも音をひそめてくれますし、夫もソーッと戸の開け閉めをしてくれます(笑)。
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三重県視覚障害者支援センター図書部門
Tel.059-228-6367
(朗読ボランティアについての問いあわせ先)
吉村陽子さんはこの人を紹介します。
吉川美智子さん
「なのはな文庫」として、自宅を子どもたちに開放するほか、絵本の読み聞かせも行っています。
おねがい
市民活動・ボランティアニュースに情報を提供される際、以下のことにご注意ください。
(1)原稿はニュースにそのまま掲載できる状態にして、
毎月10日
までにお送りください。
(2)送付はE-mailもしくはFaxで。その際、「市民活動・ボランティアニュースへの掲載のお願い」と件名を明記してください。
Fax.059-222-5971 E-mail seiknpo@pref.mie.jp
転載を希望される場合は必ずNPO室に連絡してください。
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