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| 平成19年4月25日発行 通巻101号 |
- NPOリレーインタビュー
- がんばれネットワーク
- 三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2007年5月号掲載の伊藤静生(いとう・しずお)さんのインタビューです。
- 三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。趣味をいかして県内各所で落語を披露している石崎 豊さんからバトンが渡ったのは、視覚ハンディを持ちながら、ハーモニカの演奏をボランティアで行っている伊藤静生さん。記念すべき、100人目のインタビューです。
お金をもらって自分たちで遣うと
- 「ハーモニカの音が悪くなるぞ」と
- 言ってます(笑)。
- ひぐらしハーモニカ教室
- 伊藤静生さんに聞く
- 視覚のハンディを癒してくれたハーモニカ
……ハーモニカを吹き始めたきっかけは?
小学4年生です。担任の先生が研修会で出張した時、自習時間に教頭先生がハーモニカで「汽車ぽっぽ」を吹いてくれました。それが本当に汽車が走っているような吹き方で、ハーモニカっていろいろな音が出せるのだなと思い、教頭先生の口元をじっと見ていたら、口元が凄く動いて…。「そうやって吹くのか」と思い、親父にねだって、ハーモニカを買ってもらいました。それから、やみつきです。
……毎日、練習していたのですか?
遊び半分で(笑)。小学6年生の時は朝礼で演奏しましたし、中学校の文化祭。就職してからは忘年会や演芸会などで演奏しました。
……年季が入ってますね。
10歳で始めて、今66歳ですから、56年ですか。その割には上手になってない。あかんなあ(笑)。
……目がご不自由になったのは何歳頃ですか?
今から思うと自覚症状があったのは小学5年生です。僕の出身地では10月の十五夜の晩に子どもたちが、木になっているカキやみかんをもらってきてもいいという風習がありました。月夜の晩に友だちと出かけて、帰ってきてから取ってきた物を出してみると、僕は小さい黄色いミカンばかりポケットに入れているのですが、他の子は青い大きなミカンを持っていました。夜盲症です。月明かりでは、僕の目には青いみかんが見えないわけです。その後も中学校の部活の帰り、みんなは自転車を無点灯で帰って行くのに、僕はライトを点けないと走れなかったり…。じわじわと悪くなってきました。
……会社はいつ退職されたのですか?
42歳ぐらいの時に職場にコンピューターが導入されて、書類などの字が細かくなり、読むのが大変になりました。それで部署を替えてもらいました。当時の会社は今と違って、ゆったりしていましたから「会社から肩たたきなどはしないから、自分で『もう、ダメだ』と思った時は言ってくれ。それまではここに座っているだけで構わないから、会社にいなさい」と言ってくれました。退職したのは46歳の時。通勤途中に駅のホームで人にぶつかり、線路に落ちました。枕木で頭を打って、かなり出血しまして、こんなことをしていたら、命取りになると思いました。この翌日から白杖も持つようになりました。でも、お金はいらないけれど、仕事はしたかった。それで一日中、家の中にいるので何かしようと思い、ご飯を炊こうとすると水加減が上手くいかない。洗濯しようとすると娘に「お父さん、触らないで」と言われる(笑)。何もすることがないので、まだ、どうにか目も見えましたから、隣近所の庭木の手入れや鉢の植え替えをしていました。あとはやっぱりハーモニカ。遊び相手がハーモニカしかありませんから、ハーモニカのプロのテープやCDを買って、それを聞き、本格的にやり始めました。
……本格的に始めて、それまでの演奏方法と差を感じましたか?
自己流とプロの音はこんなに違うのかと思いました。プロの演奏を聴き、分析して、ハーモニカの吹き方を30種類ぐらい拾いました。
……吹き方とは?
息の吹き込み方。唇の形や幅。浅くくわえる、深くくわえる。後は舌の使い方です。演奏によってはハーモニカを何本も使っているように聞こえますが、1本のハーモニカだけで、それだけの作業をしているわけです。それらのテクニックを拾って、整理しました。
……耳だけで拾ったのですか?
自分で言うのは変ですが、音感が良かったのでしょうね。曲を覚えるにしても、例えばオーケストラの曲を聴いて、その音に一番近いハーモニカの音を拾います。一音、一音拾って覚えますから手間暇はかかりますが、一度覚えてしまえばいつでも演奏できます。楽譜を見て覚える人は丸暗記する手間が必要でしょう?それに年を取るとなかなか覚えられないと聞きます。それが僕にはない(笑)。
……演奏しないでいると忘れてしまったりはしませんか?
自転車と同じで覚えてしまうと、できます(笑)。楽譜ではなく、音とつきあいをしているわけですから。例えば昔に歌った「春の小川」を忘れるかと言えば、そうではないでしょう?音楽ってそういうものです。
……テクニックがわかるのと、自分ができるのは別でしょう?
そこは10歳からの経験がモノを言います。ちょっと練習すると、できるようになりました。
……プロとして演奏できるようになるまで、何年かかりましたか?
本格的にやり始めてから5年かかりました。
……一口に5年と言いますが、よく熱意が持ちましたね。
ヒマやもん(笑)。毎日、長い時で3時間、短くて30分は練習しました。でも練習するのはテクニックばかり。曲は知っている物だけです。でも「春の小川」一曲でも、いろいろな吹き方がありますから。でも、本格的に自分が上手になってきたのは、生徒さんを教えるようになってからです。生徒さんには逆に教えられることが多いです。
- 個人のレベルに応じてハーモニカを教える
- ……教室を開いたのはいつですか?
最初、ご近所の人たちに教え始めたのが平成7年です。週1回木曜日に「木曜ハーモニカクラブ」として活動していたました。それが平成9年2月から「ひぐらしハーモニカ教室」となり、会場も津市のふれあい会館と、鈴鹿市の白子公民館の2ヶ所で行うことになりました。津市の方が第1火曜と第3日曜の11時から4時。白子の方が第1、3木曜の1時から4時です。
……生徒は何人?
津が13人で、白子が14人です。
……指導はどうやって行うのですか?
全員レベルが違いますから、合奏などで教えるのではなく、個人指導です。音楽の教室は合奏がいいという方と、一人ひとり教えて欲しいという方に分かれます。合奏希望の人は気の小さい人。みんなで演奏すれば、少々間違ってもわからないと思うのでしょう。独奏希望の人は気の強い人、自分を表現したいという気持ちが強い人ですから、この人は上手になります。
……教材は?
どんな楽器の楽譜でもそうなのですが、だいたいプロ用か初心者用しかないのです。その中間の教材が無いので、個人のレベルに合わせて僕がテープを作ります。上手な人はすぐに吹きこなしますから、三ヶ月もすると教材を替えないといけません。
……指導はどのように?
僕は目が見えませんから音を聞いて、相手の口元を想像します。「舌の位置が悪いですよ」とか、僕にはそれがわかるからレッスンできます。プロの曲を聴いて、テクニックを拾い上げていたおかげでしょうね。どう口元を動かせば、どんな音が出るのかがわかるようになりましたから。生徒さんには「先生には音がごまかせない。一音、一音、全て聞いている」と言われますよ(笑)。それに生徒さんを持ってから、僕自身も上達してきました。自分がどうやって吹いているのか。それをどう伝えるのか。教える立場になるとそれを考えなくてはいけませんし、自分自身がきちんと吹けないといけません。
……生徒さんにはどんな風にお話しているのですか?
まずレベルを入門、初級、中級、上級の4段階にわけ、それぞれを三輪車、自転車、オートバイ、乗用車と乗り物に例えています。三輪車では三つの種類のテクニックしか練習しません。1音を吹く、2音を同時に吹く。次は3音です。それだけですが、吹いてみると楽しいですよ。このテクニックにぴったりの曲が「とおりゃんせ」です。
……3音も一緒に吹いたら、音が混じりませんか?
ハーモニカは吹くとドミソ。吸うとレファラシと、出るトコが決まっていて、吹く音と吸う音を同時に出すことはできませんから大丈夫です。自転車になると伴奏を入れます。舌をハーモニカにぶつけて音を切ることで伴奏ができます。メロディーと一緒に伴奏をする同時ベース。メロディーを先に吹いて、舌をぶつけると後打ちベースになります。オートバイになると免許が必要ですから、運転も難しくなります。それに三輪車や自転車に比べてたくさんの部品が集まってる。ハーモニカも同じです。たくさんのテクニックを組み合わせて曲を演奏します。上級になると新たに教えるテクニックはもう3つしかありません。舌でハーモニカの穴を押さえて、ステレオで鳴らしたり、順番に音を開けていったります。
……思うように舌を動かすのは大変でしょう?
僕は多少、天才的なところがあって(笑)。できる人は三重県でも5人いるかどうかです。生徒さんに「よくしゃべるのだから、舌もよく動くやろ」と言うと、「縦には動くけど、横には動かん」と言われます。
……卒業というか、これが吹けたら一人前という曲はありますか?
「荒城の月幻想曲」という難しい曲があります。僕は今まで20人の人をこの曲が吹けるようにしてきました。上達して、僕が「よし」と思った時に、「荒城の月幻想曲」専用のハーモニカを差し上げることにしています。プロとして一人前と思える曲は、「荒城の月幻想曲」より更に難しい「桜のワルツ」でしょうか。「さくらさくら」を元にして、プロのハーモニカ演奏家が編曲して吹いている曲です。その方はもう亡くなりましたが「この曲はハーモニカの曲の中では最高のテクニックが必要だ。これが吹けるようになったら免許証はあげないけれど、一人前だと思え」と、楽譜に書いてあります。ですから、みんな挑戦するわけです。僕もこれでハーモニカ吹きと思っていいんだなと思いました。
……指導はボランティアですか?
教室の発表会や旅行などにお金がいるので月1000円会費を集めて、その内の500円を僕の交通費としていただいています。
……演奏活動も行っているのですか?
声を掛けてもらうと張り合いがありますから、断ったことはないです(笑)。小中高校、幼稚園、保育園、老人ホーム、養護施設。それから自治会、老人会、婦人会。ボランティアのたまごの教育の会とか。ボランティアサークルからも呼んでもらいます。それぞれメンバーの様子をみて、曲目は変えて吹いています。例えば、音楽に詳しい方が多い時は懐メロはやめて、クラシック。老人ホームなどはどんな方がいるかわかりませんから、クラシック、懐メロ、演歌、童謡唱歌いろいろ取り混ぜて演奏します。童謡唱歌、演歌などは生徒さんたちもかなり吹けますから、5〜10人ほど、一緒に出かけます。
……視覚ハンディのある方が演奏すると驚かれるのでは?
招待してくださった方はハンディがあることを知っていますから、当日のプログラムなどにそのことも掲載されています。生徒さんや施設のスタッフさんが僕の介助をしてくれますから、ボランティア精神を育てることに僕も一役かっているかなと。もし、僕の目が不自由じゃなかったら、周りに集まってくれる人もいないと思います。ガイドヘルパーでもない、シロウトさんが僕の面倒をみてくれるわけですから、「伊藤さんのおかげで、いい勉強させてもらうわ(笑)」と言ってもらえます。それに最近は演奏会の進行役も生徒さんがしてくれるようになったのでラクになりました。以前はプログラムすべてが頭に入ってましたけど、最近は「次誰?あ、僕か」(笑)。
……演奏に出かける時もボランティアですか?
ほとんどボランティアです。時々、結婚式などで演奏するとご祝儀をいただくこともありますけどね(笑)。そんな時は演奏料でハーモニカなどを購入し、養護施設などに行く時に持っていくようにしています。女性が多い場所にはネックレスに小さなハーモニカがついた物を用意してね。それを希望者にじゃんけんしてもらって、お譲りしています。演奏の時より、この時が一番盛り上がりますね(笑)。もらったモノは還元しないとね。お金をもらって自分たちで遣うと「ハーモニカの音が悪くなるぞ」と言ってます(笑)。
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伊藤静生 Tel.059-223-2106
- 伊藤静生さんはこの人を紹介します。

三重県声のポスト友の会に参加。朗読のボランティアを始めて8年目を迎えました。
- おねがい
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Fax.059-222-5971 E-mail seiknpo@pref.mie.jp
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