平成19年2月25日発行 通巻99号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2007年3月号掲載の石崎 豊(いしざき・ゆたか)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。新日本婦人の会津支部長として活躍している水谷由美子さんが教えてくださったのは石崎 豊さん。趣味の落語をいかして県内各所で落語会を催すほか、イベントや学校行事などで落語を披露しています。
落語自体がすごく奥深くて
おもしろいと思いますね。
石崎 豊さんに聞く
下手な落語を無理矢理聞いてもらう!?
……落語を始めたのは?
大学生の時です。1970年に入学して、仲間と一緒に落語研究会を作りました。私は初心者でしたが、中学時代から落語をやっていた友人が詳しくて、彼に教えてもらいました。卒業後、教職に就いてからも、大学時代の友人と落語会をしたり、1980年に津で『寝床の会』を創設したりして続けています。『寝床の会』メンバーは現在、5.5人(笑)。正式メンバーが5人で、一人は見習い中です。
……『寝床の会』という名前が面白いですね。
「寝床」という落語に浄瑠璃好きの大家さんが出てくるのですが、下手なんです。でも、大家の権柄をもって、店子たちに聞かせようとする噺です。ですから、下手な落語を無理矢理人に聞かそうというのが『寝床の会』命名の由来です(笑)。
……『寝床の会』以外での活動は?
教師を退職してからは公民館や学校や地域の人権推進協議会など、いろいろな所で公演しています。『寝床の会』以外に継続的に行っているのは伊勢市神社港の「みなとまち寄席」と、久居ふるさと文学館での「子ども寄席」。伊勢市の場合はセントレア行きの船が発着している海の駅で続けています。ここでは地域の方が集まってきて、私の落語が始まる前からワイワイしています。ここにくれば、地元のお友だちに会える、そんな会になってきたのが嬉しいですね。これは月1回開催しています。「子ども寄席」の方は年4回行っていて、先月第8回目を迎えました。こちらは落語だけではなく、毎回、いろいろな方をゲストとして招いています。
……それは図書館の方で人選するのですか?
人選もお礼も私の方でしています。落語以外の文化にも子どもたちに触れて欲しい思って、オカリナやバイオリン、マジック、南京玉すだれ、ハーモニカなどをこれまで演じてもらいました。
……石崎さんに謝礼は出るのですか?
久居ふるさと文学館の場合は津市の規定に従って頂いています。ただ、知り合いの先生から「うちで落語をやって」と頼まれるとイヤとも言えませんから、喜んでいきます。聞き手が喜んでくれれば嬉しいし、やはりそこはお金の問題ではないです。特に、学校のクラスや学年で落語を演じるのは演りやすいです。学級は集団が出来ているでしょう!みんな最初からノッてくれますからね。クラスに入って、まず「笑ってみて」と言うと、みんなが笑おうとしてくれますよ(笑)。「面白くても、面白くなくても、笑ってください。」なんて言っても、それだけで笑うことも多々あります。逆に、不特定多数の子どもたちが集まってくる場では、知らない人ばかりだから最初は遠慮があって、堅い雰囲気になりますね。それをほぐすことから始めます。
……無料公演の場合もあるのですね。
ただね、無料で呼ばれた時は、割といい思い出がないのですよ。係の人も熱意が無いというか「勝手に来て、勝手に演って」という感じで。もちろん、そんな場所ばかりではないですが。だから、私の活動がボランティアかと言われると自信が無いですね。
……有料ボランティアという考え方もありますし、石崎さんの活動は十分、ボランティアだと思いますよ。
落語会は担当者の熱意がお客さんに伝わると私は思います。しおりを用意したり、私のやりやすいように場所をセッティングしてくれたりすると、それがお客さんにも伝わるようです。
……細かなセッティングが必要なのですか?
落語は何もないところで一人の人間が演じます。「ここにボールがありますよ」の台詞で、お客さんにボールを思い浮かべてもらわないといけないような線の細い芸です。携帯電話やカメラのフラッシュで簡単に世界が壊れてしまう。ですから、環境設定がすごく大事です。私は落語を依頼されると必ず、「演じる場所で打ち合わせをさせてください」と言って、その場所を見て、セッティングもお願いしてきます。いつもお願いすることは、お客さんの密度が濃いこと(つまり満員状態であること)とお客さんの目の高さと演者である私のひざの高さを同じにしてもらうこと。それとカメラの使用禁止。どうしても撮る時は落語の本筋に入る前のマクラと呼ばれる部分で撮ってもらうようにしています。シロウトのクセに細かいことをと思われるかもしれませんが、下手なシロウトだからこそ、余計にセッティングに気を使います。些細なことで落語の世界が壊れてしまいますから。
……担当者に熱意が無いと、要求に応じられないかもしれません。
通常なら依頼者が私の所に打ち合わせに来るものですが、私が逆に出かけていくのは、私も頑張りますから、そちらもちょっと頑張ってくださいという気持ちもあります。
「桃太郎」から人権を学ぶ、人権落語
……子どもたちの前で最初に落語を演じたのは?
意識的にやったのは1999年です。その時は担任を持たずにいじめ対応という立場で各学級の習字の時間を担当していました。硬筆習字の授業を早く終え、「寿限無」を演じたのが最初です。落語が教科書に載る前で、まだNHKの教育番組で「寿限無」が放送される前のことでした。今の子どもたちは単語を短縮するのが好きでしょう。だから、長い名前も「じゅげチャン」でおしまい。長い名前を繰り返すなんてことは今の子どもの生活感覚に合わないのではないかと思いながら、それだけに稽古だけはしていきました。「寿限無」の面白さは繰り返しと、名前をいろいろな人が呼ぶ所ですから、子どもやお母さんの声色で呼んだり、お婆さんで言ってみたり、いろいろ練習しました。これが想像以上に受けて、子どもたちは大爆笑でした。そこで改めて落語のパワーに気づきました。落語はうまく出来ていると。
……学校などから公演依頼が多い作品は?
作品と言うか人権落語などが多いですね。これは「祝いのし」や「桃太郎」など、人権がわかりやすい噺を選んで演じ、その後、話をします。
……「桃太郎」が人権的なのですか?
昔話の「桃太郎」ではなく、子どもが親をやりこめる「桃太郎」という落語があるのです。この噺はなかなかよくできていて、お父さんが子どもに「むかしむかし、あるところに…」と話すと、子どもが「いつ頃や」と聞く。その質問に親が窮すると逆に子どもが親に教えていくのです。例えば、「ある所」に場所を設定するのは、日本国中どこにいっても通じるから、それだけ話が大きくなるから。「お爺さんが山に柴刈りに、お婆さんが川に洗濯に行く」のはお爺さん、お婆さんは本当は父母のことで、山に行くのは父の恩は山より高いことの例え。本来なら母は海に行くべきだけれど、海で洗濯はできないから川になっているだけで、母の恩は海より深いということをあらわしています。きびだんごを持っていくのは、きびは五穀の中で一番質素な物だから、人間は贅沢をしてはいけないという教えです。犬は三日飼われたら恩を忘れない忠義に厚い動物。猿は動物の中で一番賢い。キジは卵を温めている時にヘビが来ても逃げない勇気を持つ鳥。猿、犬、キジがお供に選ばれたのは智・仁・勇という三つの徳を表しているのです。鬼ヶ島は渡る世間の例えで、鬼退治のあと、山のような宝物を得ますが、この宝は一生懸命努力すれば財産、地位、名誉を与えられ、それをもって親孝行をしなさいということなんです。昔の人はこれらのことが小さな子どもにもわかるよう、「桃太郎」という昔話に仕込んでくれていたのですね。
……凄いですね。
よくできたいい噺でしょう?落語というのは含蓄がありますね。と、ここまで話すと皆さん、信じてしまいますが、今まで話したことは全部、落語のはなしであって、これまで何人かの噺家さんが何年もかけて創り考えたフィクションです。創りごとなんです。ウソなんです、と申し上げると皆さんがっかりされる(笑)。簡単に信じてしまわないで、真実を見抜くことが大切だと言うことを話します。
……オリジナルは無いのですか?
完全なオリジナルではありませんが「モモタロウ・ノーリターン」という噺を何度か、子どもたちの前で演じたこともあります。これは元々、静岡県の教育委員会に勤務されてた高校の先生が、男女共同参画の題材として書かれた物語です。これを落語にしたいと思って、作り直している所です。これが落語として完成すると私の人権落語第一作になるかもしれませんね。なかなかこしらえるのも難しいんです。
……どんな風に演じたのですか?
落語としては完成していませんので、「今からお話を作りますので、手伝って」と子どもたちに呼びかけてから、「昔々、あるところに、お婆さんとお爺さんが住んでいました」と話し、「何か違和感ある?」と聞きます。返事が返ってきたら、「昔話はお爺さん、お婆さんの順番です。学校でも男女というし、だいたい男性が前に来ますね。これは昔は男性の方が偉いとされてきたからです」と話します。二人が仕事に行くくだりになったら、お婆さんに「私も山に芝刈りに行きたい。私は洗濯をするために生まれてきたわけじゃない。」と言わせます。それに対して子どもたちにお婆さんが柴刈りに行ってはいけない理由を言ってもらいます。はい、おばあさんが柴刈りに行っては行けない理由は?
……え(笑)。男性の方が力があるとか…。
力の強い女性もいる…と質問を続けていくんですよ。そうして最終的には「決定的な理由が無いので、お爺さんとお婆さんは仕事を入れ替わることにしました」と話を続けます。柴刈りに行って見ると枯れ枝はたくさん落ちているし、カラカラに乾いているから軽くて、背負うのもラクだということにお婆さんは気づきます。一方、洗濯は川の水は冷たいし、汚れを落とすには力がいるし、そのうえ中腰になるから腰が痛い。柴刈りとは比べ物にならないぐらい大変な仕事です。おまけに仕事をしながら、今日の夕飯の献立も考えないといけない。そこに桃が流れてきて、「これを夕飯にしよう」とお爺さんは考えるわけです。その桃の中から玉のような女の子が生まれ、桃子という名前を付けました…と話は続きます。この話をすると男女共同参画のことがよくわかるようです。このやり方だと聞き手が参加していますが、これを会話で進めていくことが出来れば落語の完成です。今手応えを感じて、創っているところです。
……人権落語以外に面白いレパートリーはありますか?
英語落語でしょうか。大学時代に「落語を英語でやったら面白いやろな」と話してはいたのですが、英会話はできなかったので忘れていました。その後、桂枝雀さんが英語落語をやり始めて、「やっぱりできるんやな、自分もやってみたいな」とは思っていました。実際に演じたのは2003年にオーストラリアに1ヶ月、語学留学した時です。現地の教授に趣味を聞かれて、落語と答えたところ、「落語って何?ぜひ聞かせて」という流れになって、留学最後のフェアウェルパーティーの時に「犬の目」という落語をやりました。落語を英語に訳して、それを先生に直してもらって、覚えて…。辛い、ハードな経験になりました(笑)。「犬の目」は目を悪くした人が代わりに犬の目を入れると、犬のようになってしまうという噺で、ストーリー自体はファニーだからいいかなと思って選びました。日本人にはあまり受けませんでしたけど、オーストラリア人には割と受けたみたいで、一緒に行った日本の人から「うちのホストファミリーが面白い話しだったと言ってたよ」と聞いて、苦労した甲斐があったなと思いました。
……日本で英語落語を演じたことは?
桂枝雀さんの英語落語をサポートしていた山本先生が教えている英語落語の会「おふく寄席」に参加し、ニューヨーク・大阪・名古屋・津市の小学校など、何カ所かで演じました。
……石崎さんの落語のレパートリーは?
演じた噺は100席を越すと思いますけど、「今、やって」と言われたら10席くらいしか話せないと思います。一日時間を貰えれば20〜30席ぐらいには増えるかな。 でも、年を取ってから覚えた落語は覚えるのに時間がかかって、抜けるのは早い(笑)。二十歳代に覚えた落語はしばらくやらなくても出てきますけどね。
……今、年間何回ほど落語を演じていますか?
60回くらいかな。いろいろな人と出会えるのが嬉しいですね。「あなたの笑顔は100人の笑顔をつくります」と教えてくれた方もあるし、神社港のように地域の人が集まる寄り合いの場になっているのを見ると、地域の活性化とまではいかないでしょうが、少しは役立っているかなと感じます。落語をボランティアだとも思っていなかったし、何かに貢献しているとも思っていなかったのですけど。
……最後に石崎さんにとって落語の魅力とは?
一番最初は、面白いことを言うと笑ってくれる。その反応が返ってくるのが楽しかった。今ももちろん同じですが、落語自体がすごく奥深くておもしろいと思いますね。いろんな噺があるなかで、20代で見た落語も50代になって見るとまた違ったところが見えてくる。夏目漱石だったかが「落語は文化的」だと言ったそうですが、そういう文化的なところが見えてきたように感じます。
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石崎 豊(切磋亭 琢磨)
津市南が丘2丁目17-11
Tel.059-225-1489 携帯090-4250-1142
落語会の様子。時には観客が落語に参加することも…。
【石崎 豊さんはこの人を紹介します。】
伊藤静生さん
童謡や唱歌の復活、人の心を癒す演奏家を目指そうと「ひぐらしハーモニカ教室」を設立しました。来月はインタビューを1回、休載いたします。伊藤さんの登場は5月号です。お楽しみに。
おねがい
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Fax.059-222-5971 E-mail seiknpo@pref.mie.jp
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