平成18年11月25日発行 通巻96号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2006年12月号掲載の鬼頭志朗(きとう・しろう)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。自殺防止の相談電話「三重いのちの電話協会」の野殿照子さんが紹介してくれたのは鬼頭志朗さん。平日は多忙なビジネスマン。休日はこれまた多忙な森林ボランティアとして過ごす鬼頭さんの生活に迫ります。

私は、“森は命の源”と思って
活動しています。
Wood Land三重
鬼頭志朗さんに聞く


KOA森林塾で山造りの基本を学ぶ

……森林ボランティアを始めたきっかけは?
仕事の取引先が日本全国にあり、出張が多く、日本中を飛び回っています。日本の国土の60%以上が森林で、その半分以上が人工林。鉄道やバスは、その中を縫うように走っていますが、車窓から外を見ると山の中は凄く暗いし、木もたくさん倒れていました。薄気味悪いぐらいの山がたくさんあることに「これは、ちょっとおかしいぞ」とふとしたことから気づきました。そして自分が森林ボランティアを始めることを含めていろいろ考えていた時に、信州大学元教授である島崎洋路先生が書いた『山造り承ります』(川辺書林)という本に出会い、すぐに島崎先生に電話しました(笑)。
……行動力がありますね。
弟子入りを志願しましたが、「弟子はいっぱいいるからね〜。山の勉強がしたいなら森林塾があるから来なさい」と言われ、2000年に長野県伊那市にあるKOA森林塾に入りました。安全に作業する基本と愉しく山で活動する方法を日本中で一番正しく教えてくれるのはここだろうと塾に入ってから思いました。どんなことでも基本が一番大事ですから。
……KOA森林塾とは?
電子部品を作っているKOAという会社の社長さんが、12〜3年ほど前に島崎先生と出会ったことがきっかけで作られた塾です。当時、長野県でも森林整備ができない山主さんが増えていて、山が荒れていたそうです。それで自分の手で山の整備ができるように教育する場を作ろうということで始まりました。実際には、当初塾生を募集したら、地元の人ではなく東京など都市部に住んでいて、森林に関心のある人がどっと押し寄せたそうです。しかし、この中から森林ボランティアになる人が増えて、全国に散らばっていけば、島崎先生の考えた山造りの思想も長野県に留まらすに広がることになるんだと思います。その結果、今では地元の参加者も増えて、勉強されています。
……森林整備は代々、伝承されていくイメージがありますが?
今は、山の持ち主も会社務めにでる人が増えて、山での仕事をしないために伝承が途切れそうになっています。山主なのに、自分の山の場所が分からないという人も増えています。
……森林塾ではどんなことを教わるのですか?
一年間を通じて、林業と林学、植生分類、森林整備に関わる技術的なことを教えてもらいました。まず座学として山仕事の基本的な考え方、道具の使い方とメンテナンス。山の測量。植生の分類など植物学まで全部学びます。あと、山を世話する為に必要な作業道の作り方なども教えてもらえます。講義は1日で終わることもあれば、1泊2日の時もあります。私は2年通いました。最初の1年は集中コースでした。翌年は通年コースで毎月伊那に通いました。ここで学んだことを活かせば、週末の休みだけで充分、山の整備ができるようになります。
……その後、三重県で活動を始めたのですか?
卒塾して活動を始めたのは、今は豊田市に編入合併した愛知県の足助町でした。KOA森林塾の卒塾生が集まって、足助きこり塾というグループを作りました。ここではプロの篤林家のスーさん(私たちのニックネームです)に、半ば弟子入りするカタチでプロの林業技術、山造りの基本と応用編を教わっています。
……三重県での活動は?
森林ボランティアの人たちや一般の市民の方に声をかけて、2005年2月1日にWood Land三重を発足させました。このグループは、一般に言われる森林ボランティアから、もう少し林業作業技術ができる会です。私は、“きこりボランティア”と呼んでいます(笑)。今は、鈴鹿市小岐須町の人工林で、山主さんの理解をいただいて、間伐などの森林整備を行っています。このほか、自然観察指導員三重連絡会の特別プロジェクトとして作った「やまもり隊」では、松阪市柚原の人工林を整備しています。こうして、県内各地に小さな森林ボランティアグループを沢山作って、地元と上手に連携しながら森林活動の愉しさを伝えていく、そうしたお手伝いができればいいなと思っています。
……間伐は有償ですか?
今は有償では受けていません。その代わり、間伐材は無償で使わせてもらうようお願いしています。私は間伐して山を整備するだけでなく、間伐材を利用することで資源の循環をさせたいと考えています。私達が間伐した木を製材所に持っていき、製材された木材でベンチやテーブルなどの道具を作ってもらい、県民の方々に使ってもらう。そうやって木を遣う生活と資源循環をさせたいですね。
……作業道具はプロと同じ物を使うのですか?
プロが使う道具で作業をしています。それは、安全を重視した考え方なのです。山仕事は危険を伴います。ですから、負担の少ない安全な道具が一番なのです。そうすることで、土・日曜だけでも山林整備はできることを証明できます。
……なぜ、間伐されない山が増えたのでしょう。
「山仕事は木材が売れないから儲からない」と言われています。私はそう思っていませんが…。本来なら林業就業者は山仕事だけで暮らせる収入を得なくてはなりません。ところが木材価格が安いからといって、仕事に見合うだけの賃金が支払われていないのが実情なのです。そんなことはあってはならないですよね。だから、間伐もされなくなってしまう。しかし、ある人は「林業は王者の仕事だ」と言いました。国土を作るための大事な仕事をしているのです。仕事にプライドが持てる職場にすることと自分とその家族が暮らせる仕事に見合った収入が得られるような構造にしていかなくてはならないでしょう。そのベースを私達森林ボランティアが活動することで共に創りあげられる可能性があると思っています。
……ボランティアが山に入ることで、林業家の仕事が減るのでは?
間伐材の循環のように、経済の流れを作ることで、山で働く人が幸せになれるカタチを作れたらいいなと思っています。森林ボランティアはそれなりな山造りの話しが分かりますから林業就業者と山の話もできますし、町へ行けば町の人に山の話しができますよね。だから、山の声を町に伝え、町の声を山に伝える橋渡しができるのではないでしょうか。そして、山に人を連れてくることもできる。連れてくれば町の人の目に山の状況が映るし、山の人と交流することでお互いが元気になれるのではないでしょうか。町の人は、山で培われた文化や工夫、知恵を生活に取り込むこともできますね。

森林ボランティアを増やすには…

……森林ボランティアと聞くと体力的に大変な気がしますが。
森林ボランティアにもいろいろあります。我々のように人工林の整備をする者もいれば、里山づくり、森と親しむ活動で森に入る人もいます。みんな、自分がやりたいことを楽しんで、それが少しでも社会のためになるようになっていればいいと思います。誰でも少しの力で森林を育むことができればいいのではないでしょうか。
しかし、心無いことで山を荒らして帰ることだけは止めて欲しいですね。森林というのは人工林でも、自然林でも、命の息づいている所です。小さな生き物から大きな生き物までいて、水も蓄えられる。私は、“森は命の源”と思って活動しています。
……森林ボランティアのやり甲斐は?
特に見返りがあるわけではありませんが、自分の作業の結果がその場で見えるのは気持ちいいですよ。暗くて鬱蒼としていた森が、一日間伐作業をしただけで、陽が差し込む健全な森に変わっていく・・・。それが森林ボランティアのやり甲斐、生き甲斐のあるところ。普段、私の仕事だと結果がなかなか見えませんが、山の整備はすぐわかっちゃいますからね(笑)
……仕事とは正反対の世界ですね。
脳みそと体の筋肉。まったく正反対の部分を使うので疲れないし、リフレッシュできます。ストレスも貯まりません(笑)。森林ボランティアを始めてますます健康になりました。平日はすごく不規則な生活をしているのですが、休日で取り戻しているので、毎年健康診断をするたびに優良診断が出ています(笑)。職場の人から「どうしてこんなに健康なの?」って言われるくらいです。森林ボランティアを始めてから3年ぐらいは職場では秘密にしていたのですが、最近は同僚だけでなく、得意先や仕入れ先の方に現状を理解して貰う為に積極的に山仕事の話をしています。
……森林ボランティアを増やすためには?
KOA森林塾のように、基礎的な勉強と技術が学べて、ボランティア活動を支援してくれる場所をたくさん作ることですね。学んだ人たちが山に入っていく仕組みを作っていけるといいなと思います。
……三重県内の森林ボランティアは何人くらいいますか?
詳しいことはわかりませんが、少なくとも1000人以上はいると思います。実はあまり繋がりがないので、森林ボランティアのネットワークを作ろうと考えています。また、山や川、里、海の有機的な資源を有効に使おうとしている産官学民を繋げようという会、伊勢三河湾流域ネットワークにも参画しています。
……具体的な活動はありますか?
今年の5月21日に鈴鹿川流域の森の健康診断を行いました。これは去年、愛知県の矢作川流域で始められた活動ですが、僕が覚えてきて、三重県内でも始めることになりました。今後、10年続けていく予定です。実行委員会のメンバーは自然観察指導員や森林ボランティア、伊勢三河湾ネットワーク、三重大学を中心とした研究者です。これは一般の人に普段は入れない人工林に入ってもらって、簡単な調査をしてもらい、その場で森林の健康状態を知ってもらう活動です。調査結果は研究者の手で科学的に分析されて、報告ももらえますし、データはその後、いろいろな分野で活用される可能性も秘めています。今回は鈴鹿峠周辺の人工林で行いました。
……普通の人が山に入って調査するのは体力的に大変では?
ハイキングができるくらいの体力があればできる程度の簡単な調査です。日頃、山とは接していない人たちに人工林の実態を見てもらうことで、森林ボランティアに目覚めてもらえればと考えていますし、そこまでいかなくても自分たちのできる範囲の活動で山の応援団をたくさん作ることにもなります。
……観察は同じ場所で続けるのですか?
鈴鹿川は支流が多いので、流域で広げていきたいし、三重県内の河川流域単位で活動するグループが出てくれば、それにこしたことはない。この活動は矢作川の活動とも、岐阜で行っている活動とも繋がっています。今後は全国各地で増えていくのではないかな。環境を理解することから始まって、これからどうしていくのか、自分はどう関わっていけるのか考えられるのは良いことだと思います。行政も、研究者も、地元の人も。みんな友だちになって、いろんなことをやっちゃえというのが、新しいスタイルの市民活動。その道の専門家が自分の仕事の延長で、社会貢献のための活動をすることも僕はNPOだと思います。ところで、日本ではNPO法人格を持たないとNPOと名乗ってはいけないと聞いたのですが、本当ですか?
……とんでもない誤解ですね。法人格の有無を問わず、市民活動やボランティアはNPOです。
それをもっとたくさんの人に知ってもらわないといけませんね。私はボランティアは無償な活動と思われているのもイヤです。NPOは非営利の団体ですけど、活動するには、それなりに経費がかかりますから、それは正当に請求してもいいものだと考えています。
また、その対価を払ってでも、ボランティアに活動して欲しいと言う人がいっぱい出てくるといいですね。そうでないとみんな疲れて止めてしまうし、ボランティア活動が広がっていかない。誉めて欲しいからボランティアをするわけではないけれど「あの人たちは物好きだ、ヘンだ」と言われながら活動するのもちょっと寂しいですよね。森の健康診断のような活動があれば、今までボランティア活動の内容を知らなかった人たちにも内容がわかりますよね。山の場合なら、自分は森林整備はできないけれど、経済的な支援はできるから基金を作ろうとかね。それをみんなで平等に使ったり、上手に使って活動を広めていければいいですね。周囲に理解してもらって、活動を支えてもらうことはボランティア活動をしている人たちを元気にしていくもとですから。
……大切だけれど、難しいことですね。
先は遠いけど。まずは自分が楽しくやることかな。そうじゃないと周りの人も楽しめないし、イヤなことがあっても、それを楽しい方向に変えて行くことは仕事から得た教訓です。クレームが出た時、逃げてしまうとその先には何も無い。でも、ちゃんと正面から向かって、問題を解決することは必要だし、相手に迷惑をかけないことは義務であり、責任。それに周りの信頼も得られます。怒られに行く方がその先、より面白いことができるということです。人生同じ時間を使うのなら、楽しく前向きにやっていった方が楽しくなりますよ。そうやっていると、同じような人が集まってきますから。

Wood Land三重
E-mail s-kito@m3.cty-net.ne.jp
ホームページ
http://homepage2.nifty.com/WoodLand-mie/
【鬼頭志朗さんはこの人を紹介します。】
澤 孝予さん

三重大学付属病院のボランティアや「みえ生と死を考える市民の会」の運営委員など医療、福祉分野で活躍しています。
おねがい
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(1)原稿はニュースにそのまま掲載できる状態にして、毎月10日までにお送りください。
(2)送付はE-mailもしくはFaxで。その際、「市民活動・ボランティアニュースへの掲載のお願い」と件名を明記してください。
Fax.059-222-5971 E-mail seiknpo@pref.mie.jp

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