平成18年10月25日発行 通巻95号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2006年11月号掲載の野殿照子(のどの・てるこ)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。趣味の絵手紙をいかしてデイサービスやホスピスなどでボランティアをしている林 沙苗さん。彼女からバトンが渡ったのは自殺防止の相談電話「三重いのちの電話協会」でボランティアをしている野殿照子さんです。
私たちは「死にたい」と言うのは
「生きたい」という心の叫びだと思っていますから
三重いのちの電話協会
野殿照子さんに聞く
一人で悩まないで 『いのちの電話』
……『いのちの電話』の活動内容は?
『いのちの電話』は一人で悩んだり、苦しんだり、誰にも話せない悩みを誰かに聴いてもらうことによって少し気持ちが整理できたり、落ち着いたりしますよね。
そういう方のお話を電話を通して聴かせていただく活動です。
……野殿さんがいのちの電話を知ったのは?
21年ほど前、夫の転勤で名古屋に引っ越した時です。何かボランティアをしたいなと思っていたところ、『いのちの電話』を設立する準備中だという話を聞いて、参加しました。カウンセリングに関心があったので、参加できそうと思いましたが、現実はそんなに単純なものではないですね。
……ボランティア活動には抵抗が無かったのですね。
名古屋に行く前は津市で朗読のボランティアをしていました。ボランティア活動はいろいろな人と関わることができるのが、凄くいいと思います。ボランティアの仲間は地域や年齢、職場など限られた仲間ではなく、それぞれがいろいろなことをしている人の集まりなので、本当に面白いですよ。
……三重での立ち上げにも参加されましたか?
三重に戻ってきた時に、こちらにはまだ『いのちの電話』が無かったので「三重にも『いのちの電話』があるといいね」とカウンセリングの勉強をしている人たちに呼びかけ、5人ほど集まりました。その後、名古屋の『いのちの電話』で講師をされていた元あすなろ学園園長の清水将之先生に協力のお願いに行き、理事長を引き受けてくださいました。現在は元百五銀行頭取の川喜田貞久理事長に引き継がれています。この時、相談員を募ったら80名ぐらいの応募があり、1年ほど研修を行ってスタートできました。
……現在、相談員は何人いるのですか?
これまで認定されたのは113名で、実働は70名ぐらいです。現在、5期生の養成を行っています。活動は月に数回参加し、ローテーションを組んで回しています。
……相談員になるにはどうすればいいのですか?
『いのちの電話』の相談員は認定制度になっています。1年半あまりの期間、月3回ほど土曜日の午後に開催している研修を受けていただいて、レポート提出や面接を経て、臨床心理士の先生や、専門家の『三重いのちの電話』訓練委員が認定を行います。
……応募される方の動機などは?
私のように社会と関わっていたいと思った方もいますし、自分自身の勉強の機会と捉えて参加する方もいます。研修は前期と後期に分かれていますが、両方通して約6万円ほど費用がかかりますから、そのお金を出してでも『いのちの電話』に関わりたいという方が集まってきてくださっています。
……研修期間中に辞める方はいませんか?
「向いてないようだから」と自ら辞められる方はいます。『いのちの電話』の相談員はかけてくださる方の話を「うん、うん」と聴かせていただくことなので、自分のことを話したくなる方はね…。そこを上手に自分の中で整理できるといいのですが、できないと難しいですね。
……研修は最初に受けるだけですか?
相談員向けに毎月、何らかの研修を行っています。相談を受けている時に「もっと良い言い方があったのでは?」などと思った時は研修時に話し合ったり、スーパーバイザーの指導を受けます。
……話し方なども研修で決められるのですか?
電話をかけてこられる方は元気の無い人が多いですから、こちらが明るく元気な声を出すと違和感が生まれてしまいます。そこを気をつけるぐらいですね。あとは声の大きさやスピードなどを相手のペースに合わせるくらい。ゆっくり話す人に対して、こちらがせっかちに話すと相手の方は話せなくなってしまいますから。
……相談員の年齢層は?
平均すると40歳代後半かな。男女比は圧倒的に女性が多いです。
……相談に対応している時間は?
毎日18時から23時の5時間を交代で受けています。
……終了が23時では、女性は出歩きにくいのでは?
出にくいという方もありますが、お勤めされている方などは遅い時間の方が入りやすいですね。相談時間を18時からにしたのは、公的な相談電話の対応時間が終わった後の時間帯をカバーしてきたいという前理事長の発想でした。24時間相談窓口を開放している施設もありますが、まだまだ少ないですからね。『いのちの電話』も基本姿勢は24時間窓口で、全国50センター中、27センターほどは24時間、相談を受けていますが、三重ではまだ難しいです。
……夜中に電話が来るのですか?
夜の方が重くて深刻な電話が多いですね。「目が覚めて、眠れなくて、寂しくって」とか、夜の方が気持ちが沈みますから、夜の電話相談は大事だと思います。自殺も明け方の6、7時頃が多いと統計的に出ていますから、夜の電話相談を行うことで、思いとどまってもらえればと思います。
……休日は?
ありません。365日、土日曜も年末年始も行っています。ただ、台風で警報が出た時はお休みさせていただいています。相談員の安全を守ることも大切ですから。
……運営資金は?
会員さんの寄附がほとんどです。正会員が一口1万円、賛助会員が3千円になります。このほか、フリーマーケットに参加したり、講演会やチャリティコンサートなどを開催して調達しています。行政などの支援は全く受けていませんが、毎年12月に厚生労働省の委託事業としてフリーダイヤルの『いのちの電話』を開催しています。今年も12月1日から7日までの1週間、行います。
……相談事で困ることはありませんか?
電話相談を行っているところならどこでも同じ様な悩みがあると思いますが、いたずらっぽいような電話には困ります。本当に困っている人がかけたい時に電話が繋がらないことになりますから。それに、そういった電話ばかり聞いていると相談員のモチベーションが下がってきますからね(苦笑)。
三重いのちの電話のパンフレット
ありのままを受け入れ、共感する
……相談内容は自殺だけではないのでしょう?
職場の人間関係や家族の問題、病気、仕事が上手くいかずに悩んでいるとか、内容はいろいろです。自殺にしても原因は一つだけでなく、複合的な要素がありますから。これらの悩みを人に話さずに自分の中で抱え込んでいると鬱などの病気になってしまうこともあるでしょう。
……せっかく電話をかけてきてくれても、対応次第で逆効果になることもあるのでは?
お互い、生身の人間同士が一対一で関わるわけですから、電話をかけてくださった方に葛藤を与えてしまったり、逆に相談員が葛藤を感じたりということもありますね。それを対処するために必要なのが研修です。相談員の基本は、まずお話を聴かせていただくことですから、お説教や相談員の意見などは話しませんね。かけてこられた方はこれまでの生活の中で、そういうことがいっぱいあって、苦しまれているわけですから。まず電話をかけてくださった方をありのままで受け入れ、自分の中で共感して聴くことが大事ですね。聴く姿勢というのは傾聴して共感するという所に帰るのではないかと思いますが、実際には難しいですね。
……共感して聴くとは?
「それは大変でしたね」という風に気持ちを伝えていくということですね。もちろん、言葉がよそよそしかったり、おざなりだったりすると相手の方に伝わります。顔が見えないからこそ、気をつけなければならないですね。
……実際に「死にたい」と言う方に応対したことはありますか?
今まさに、死ぬしかないという状態の方からの電話も時にはあります。そんな時はとにかく相手が落ち着くまでずっとおつきあいします。「死ぬしかない」と思いつつ、いのちの電話にかけてくださった。電話がかけられたということが凄く大事ですし、私たちは「死にたい」と言うのは「生きたい」という心の叫びだと思っていますから、とにかく「よくお電話くださいましたね」と声を掛けます。電話をかけてもらえれば、心の中を100%占めていた死への思いからも、離れてもらえます。相手の方が電話を切る時も「また必ずお電話ください」と言って、次に繋げていきます。お話している内に「落ち着いてきましたから、今日は止めておきます」とおっしゃった方もありました。
……そんな電話を受けた時は受けた側も緊張するでしょう?
もう胸がバクバクですよ。どうしたらいいかなって。でも、相手のペースに巻き込まれてしまうと、同じように潰れてしまいますから、冷静に対応していきます。まず、「なぜ死にたいと思われるのでしょうか」「死にたくなるほど、苦しいことがあったのですね」と聴きます。この時に「実は…」と話始めてくれれば、少し落ち着いてくれますね。また、お話を聴きながら、「せっかく電話が繋がったのだから、生きていて欲しい」という気持ちも伝えます。
……身近に話を聞いてくれる人はいないのでしょうか?
身近にいたとしても、同じ様な話を繰り返していると「いつまで同じ事、言っているの」とか、「そんなこと言っていてもダメ」と諭されてくるのではないかと思いますよ。身内や友人、知人には話せないこともあるのだと思います。
……アドバイスなどはするのですか?
なかには「アドバイスいただけないのですか」と言う方もありますけど、基本的にアドバイスはしません。でも、法律関係の相談窓口などいろんな情報を提供することはあります。
……相手の立場や情報などはどうやって聴き出すのですか?
相手が話してくだされば事情も聴きますが、こちから聴き出すようなことはしません。話してくださる範囲で聴かせていただくという感じですね。相談員は精神医療分野の専門家ではありませんから、無理に聴き出したりすると大変なことになってしまうと思います。
……話を聞く内にもらい泣きするようなことはありませんか?
気持ちが巻き込まれてしまうのはあまり良くないのですが、もらい泣きすることはありますね。電話の前に座ったら相談員、離れたら日頃の自分と気持ちを切り替えていますが、話の内容によっては後で思い出したり、いつまでも耳に残っていることもありますね。
……電話をしてきて、相談員にクレームをつける人はいませんか?
相談員の声の様子で「あなた若そうだから、私の悩みはわからないでしょうね」と言うこともありますね。でも、人の話を聞くのは年齢ではないと思います。その人の気持ちをきちんと受け止められるかどうか。感性を問われるということです。自分の価値観だけで判断するのではなく「この人はそんな風に考えて生きているのか。それは辛いだろうな」と受け止めることが大切ですね。
……相談して良かったと言う人もいるでしょう?
最後に「ありがとう」と言っていただけることは少ないですが、「聴いてもらえたから、今日はゆっくり休めます」とか「ちょっと気持ちがラクになりました」とか言ってくださる人はありますし、その辺りに活動の意義を感じます。電話することで誰かを助けてあげるなんて大それたことは考えていませんが、たくさんの人の話を聴かせていただくことで、自分を振り返ることもできるし、社会と触れているという実感もありますね。ですから、自殺のニュースや情報を聞くと空しくなります。自殺者数はこの8年間で3万人を越えていますが「誰かに相談できたら死ななくて良かったのでは?」とすごく思います。
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『いのちの電話』
相談電話 Tel.059-221-2525(毎日18:00〜23:00)
12月に『自殺予防いのちの電話』フリーダイヤル開催
12月1日(金)0:00〜7日(木)24:00
Tel.0120-738-556
【野殿照子さんはこの人を紹介します。】
鬼頭志朗子さん
「Wood Land三重」代表世話人のほか、四日市市を中心にした自然環境ボランティアに積極的に関わってみえます。
おねがい
市民活動・ボランティアニュースに情報を提供される際、以下のことにご注意ください。
(1)原稿はニュースにそのまま掲載できる状態にして、毎月15日までにお送りください。
(2)送付はE-mailもしくはFaxで。その際、「市民活動・ボランティアニュースへの掲載のお願い」と件名を明記してください。
Fax.059-222-5971 E-mail seiknpo@pref.mie.jp
転載を希望される場合は必ずNPO室に連絡してください。
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