平成18年8月25日発行 通巻93号
NPOリレーインタビュー
がんばれネットワーク
三重県NPO室が発行する市民活動・ボランティアニュース2006年9月号掲載の鈴木愛子(すずき・あいこ)さんのインタビューです。
三重県内の市民活動団体の人をリレーで紹介していきます。但し、紹介するに当たってはルールがあります。1・同じ地域で無いこと。2・同じ活動分野で無いこと。さてどんな人がどんなふうに、つながっているのでしょう。様々な施設や病院を回って音楽ボランティアをしている浜口素則さんからバトンが回ったのは四日市市の鈴木愛子さん。聖十字病院の緩和病棟でボランティアをするほか、高齢者の居場所づくりも行っています。

本当に人間って優しく、いとおしく、
そして悲しくできていると思います。

鈴木愛子さんに聞く


素直に心通わせる

……病院ボランティアを始めたのはいつ?
今年に入ってからです。1月に面接を受けて、すぐにお邪魔することになりました。本業で夫が経営している建材資財の卸売り会社の経理を担当しているものですから、時間のことを考えて最初はひと月に一度、お邪魔するつもりでした。ところが、お話を伺っているうちに緩和病棟という所は明日を念頭に置くのではなく、今日一日に対応している所なので、ひと月に一度という頻度では間が空きすぎると感じました。それで、最終的には1週間に一度、金曜日にお邪魔することにしました。
……回数を変えるのは悩まれたのでは?
仕事との兼ね合いもありますし、どうしようか悩みましたが、本当に自分でやりたいと思ったことなので選びました。生きていくうえで仕事は大事ですが、そのために生きているわけではなく、自分の想いを実現する、生き甲斐を感じることの方が大事です。でも、お話を聞いて「その日、その日が大事だよ」ということを頭ではわかっていても、実際には理解できていませんでした。
……金曜日は朝から行かれているのですか?
午前中仕事をして、午後の2時から活動しています。当初の約束は2時間ほどでしたが、その日出会った人とのふれあいによっては5時まで延長したり、終わってから個室を訪問したりもしています。
……病院ボランティアの仲間は?
金曜日に来ているのは私だけ。他の曜日の方もいるようですが、集まることが無いのでお互いの情報はよくわかりません。
……患者さんへの対応についての指導は?
自分で考えて、できることをやらせていただいています。面接を受けた時には「愛文(あいぶみ)の会」をやりたいとお話させてもらいました。私は詩を書くことが好きですし、文字にするということは本当に良いことだと思います。緩和病棟の患者さんに病院で感じたことを書き残してもらえば、残された方も元気をもらえるのではと思っていました。それで自分で絵を描いた台紙とペンを持っていって、「何でもいいから書きましょう」と呼びかけました。でも、病院側の方に「文字を書けない状態の方もいますけど、まあ始めてみてください」と最初に言われた通り、本当に文字が書けない状態の方が多かったです。
……文字が書けない方への対応は?
皆さんがいつでも集まれる大広間で、ボランティアは活動しているのですが、ペンを持てない状態の方が多い中で、そこまで出てきてもらうのが気の毒で。なかには「私は書けないから…」と病院スタッフに話している方がみえたので、数ヶ月後に歌唱に内容を変えました。私、歌が下手なんですけど、せっかく時間をいただいたのだから、何かやらせてもらわないといけないと思って必死で歌い始めました(笑)。童謡などみんなが歌えそうな曲を選んで、手作りの歌詞カードを皆さんに渡して一緒に歌っています。耳しか聞こえない人も反応がありますし、歌えない方でも手拍子をしてくださったりしますから、歌に変えて良かったなと。
……曲は童謡がメインですか?
それと私が書いた詩に曲をつけてもらったものを歌っています。「自分だけの命じゃないから、大事にして頑張ろうね。自分のためだけに生きているんじゃない。自分を大切に思ってくれる人がいるから、がんばれるんだ」という歌です。今年の12月3日にはコンサートのようなことをしたいと思って計画しています。その時に入院されている方で、外出許可が得られる方にはぜひ来て欲しいと思っています。それもその時のご縁ですからね。
……ボランティアの時間への参加者はどれぐらい集まるのですか?
お一人から8人ぐらいまでです。その中でもベッドごと来られる方や歩ける方、身体の具合に差があります。
……歌う以外にも活動を?
その日によってできることが違うので、持参するバッグにはいろいろな材料を多めに入れてあります。例えばひな祭りの時には手鏡と口紅を持っていきました。取り出すまでは、どう受け止められるか想像できませんでしたけど、すごく喜んでくださいました。あの日は楽しく嬉しかったです。高齢の方でも鏡をのぞき込まれてにっこり。でも、用意をしていっても、お話をして終わる日もあります。
……どんな話をされるのですか?
最初は泣いてしまうような話や、死ということに触れてはいけないと自分に言い聞かせていました。でも、それは絶対に避けて通れないこと。お話をしている時に周囲があわただしくなって、「どなたか容態が変わられたかな」ということもありますし…。ですから今では正直に自分が思っていることを話そうと、内容は特に意識しないようになりました。患者さんにとっては素直に心通わせることが大切なこと。一期一会です。昔の話や命のこと、お母さんのこと。真剣にお話させていただく内にだんだん心がとけあってゆきます。お話して、感動して、泣き合って、心をぬくめあって…。筆談しかできない方が「お母さんに出会えたようで、嬉しいです!」と書いてくださったこともありました。
……どんな時に歌だけでなく、お話をしようと思うのですか?
何となくその時の流れのような時と、この方は何かお話なさりたいのかもと感じた時です。
……病院スタッフとボランティアの違いをどう考えていますか?
仕事であるスタッフと私とでは、患者さん側の受け止め方が違うのかなと感じる事があります。例えば「縫いかけたものをどうしても仕上げたい」と手渡してくださったり、「○○が食べたい」と話してくださったり。スタッフの皆さんはとても心配りのできる方ばかりなのですが、患者さんの優しさから頼むと悪いと思われるのでしょうね。私自身としましては甘えてくださる事がこの上なく嬉しいのです。私には患者さんの痛みを和らげてさしあげる事も、夜中に看てさしあげる事もできません。許される範囲内でスタッフの皆さんとは違った接し方、過ごし方をさせていただけたらと思っています。
……病院側の反応は?
私の行動がダメなら「ちょっとやりすぎです」と注意されると思いますが、今のところ一度も注意は受けていませんし、患者さんの伝言もきちんと伝えてくれますから、今のままで良いのかなと思って、臨機応変にやらせてもらっています。
……患者さんとの出会いはまさに濃密なものだと思いますが…。
明日の約束ができる方たちではありませんから、お会いするのはこれが最後になるかもしれないという気持ちでいます。大広間に10人集まってくれたとしても、全員と親密になるのは難しいです。終わってからお声がけくださる方とお話ししたりしています。時には「来週も部屋に来てね」とか、「体調が悪くてボランティアの会には出られないけど、終わったら絶対に部屋に来てね」とスタッフの方に伝言してくださる方もいます。
……ボランティア後、個人的に部屋に伺ったりもするのですね。
病院の許可をいただいてもってきたお菓子などをお部屋で一緒に頂いたり、お話したりして帰ってきます。帰る時には「来週絶対に来ますから、また会いましょうね」って必ず言って、握手して、部屋を去ります。先週、お会いできた方にもう一度お会いしたいという願い。今日はどんな出会いがあるのかとか、こんな私に与えられた2時間で、今日は一体何ができるのだろうかとか。親しくなれるほどに喜びと悲しみが同居し、心配と不安で心がいっぱい。でも、それでも行かずにはいられない。その辺はちょっと言葉では説明できないです。一日が終わるともう次の金曜日が待ち遠しい。いざ、その日が訪れると向かうのが怖いような…。それの繰り返しです。
……このボランティアで感じたことは?
自分にも必ず最期の日は来ます。その時に「良かったな」という思い出が一つでも多く、最後を感謝で締めくくれれば幸せだなあと思います。ここで出会った方の一人に、一生懸命働いてお金を貯めて、立派な家を建てた時に病気がわかったという方がいました。家に入る前に入院されて、そのまま最期を迎えられました。その姿を見て、人間にとって本当に大事な物は形のあるものではないと。人の愛に包まれて「ああ良かったなあ」。そうしみじみと感じることのできる思いだと感じました。それから、人間は本質的には本当に優しくできていると、緩和病棟に行くようになって思うようになりました。ボランティアの時間に私が少しでも遅れると、患者さんたちがすごく心配してくれるのです。「病気かと思って心配した。私たちみたいにならないよう、身体を大事にして」って、ご自分たちの方が大変なのに私を心配してくれて。本当に人間って優しく、いとおしく、そして悲しくできていると思います。

高齢者の居場所づくり

……病院ボランティア以外の活動は?
三重県女性企業家支援クラブという団体の企画の一つとして、高齢者の方が歩いていける範囲に憩いの場をつくろうという活動をしていました。うちの会社の隣にもあります。家族が忙しい日中でも、時間の空いている者同士で集まって楽しく過ごせればと思って始めたことです。ここに集まって詩などを書いたり、焼き物などをしていました。そのうちに私の詩や焼き物を飾ってはどうかと提案してもらって、ここに飾ったり、年1回ほど作品展をするようになりました。ここで出会った方たちが詩の台紙を作ってくれたり、焼き物の壁飾りにひもをつけてくれたりしてくれます。
……集まる日は決まっているのですか?
一応、毎週月曜日でしたが、私の仕事の関係で出かけることが多くなり、来てもらう前に連絡をもらうようになりました。私が仕事をしていても皆さんここに集まってくつろがれてますよ。創作したり、冬には火鉢でお餅を焼いたりしてね(笑)。それ以外にも、私が出したエッセイ本を読んだ方が訪ねてきてくださることもあります。遠い所からもわざわざ来てくださったりね。縁があってこの場所で出会えた方と喜び合えればいいなと思っています。
……その場所は鈴木さんが作ったのですか?
元々は物置状態の空き店舗だった所です。畳や衝立などを持ち寄って、内装などもみんなで手作りしたみんなの場所です。
……仕事とボランティアを両立させるのは大変では?
本業があってこそ、やらせてもらえることですから。経理を担当していると金曜日が忙しい時に重なることもあります。ですから病院に入るギリギリまで携帯電話を見ています(笑)。それに仕事時間内に抜けるというのは何が理由であっても、気が引けます。その分は月曜から金曜の朝まで一生懸命、仕事をさせてもらっています。
……毎日充実していますね。
健康だからだって思いますよ。それとやらせていただける場所と人に恵まれているということです。緩和病棟で出会った方が「人に喜んでもらうのが好きで、いろんな事をしてきたけど、こういう身体になってそれが出来なくなったことが悲しい」っておっしゃってました。こうして過ごさせていただける一日一日の授かりの全てがありがたいです。
……病院ボランティアを始めて人生観なども変わりましたか?
明日にはもう会えないかも知れない方を前にすると、それ以外のことは後回し。生きている自分はいつも人を見送る側です。でもいつかは見送られる側になります。その日が来るまで心に素直に、今を大切に生きてゆこうとしみじみと思います。人はふわふわと空に浮かぶ風船のようだと思います。前ぶれも無く、ある日突然パンと消えて無くなる。風船につまっていた空気は大空にとけこんでゆく。この大空に清らかで美しい空気が広がるように命ある間に風船の中にいい空気をいっぱい詰め込みたいです。残された人たちが「ああ、おいしい!」ってその空気を吸って生きてゆけるようにね。それには「ああ、いい一日だったなあ」っって感動と感謝の日暮らしをする事ではないかなあと思います。形の無いものですが、もともと無いからこそ消えることもない永遠の財産かなと思います。緩和病棟で歌う時、静かで平和です。わずかな時間ですが「ありがたいなあ」と。それだけで心満たされ、日常の煩わしい雑事は遠のいていった気がします。

皆さんが集まる場所には鈴木さんの作品が飾られています。

鈴木愛子
Tel.059-365-3118

【鈴木愛子さんはこの人を紹介します。】
林 早苗さん

高齢者の方に絵手紙の指導をされている林さん。福祉分野のボランティアでも活躍されています。
おねがい
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Fax.059-222-5971 E-mail seiknpo@pref.mie.jp

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